コラム

2006/04/28

歴史のイメージと常識(水・KK)

歴史のイメージと常識

▼歴史の教科書をひもとくと明治維新を「日本の夜明け」と呼んでいる。まるで江戸時代を厳しい身分差別と斬り捨て御免、一揆と飢饉が多発した暗黒時代と決めつけている観がある

▼井沢元彦氏は著書『逆転の日本史』(小学館)の中で日本の歴史学には「史料至上主義」という大きな欠陥があると指摘する。「史料がなければそれに対応する事実のない」という考え方だが、井沢氏の説に触れ、目からウロコが落ちる思いがした

▼普通に食事をしている限り「今日も、きちんとご飯を食べました」などといちいち書くはずがない。例外的な米不足や一揆、打ち壊しなどは詳しい記録が残るが、圧倒的に多い普通の生活である「分母」を無視し異常な事実に過ぎない「分子」ばかりを強調する歴史観は危険なのでは

▼江戸時代、農民はぎりぎりまで搾取されたイメージだが、実際には税率ではなく税額での課税だったため米以外の農産物や出稼ぎなど付加価値の高い所得も含めて、税率に換算するとせいぜい10%台に過ぎなかったと言われる。たとえ収奪されたとしても家族を含めても人口の7%程度の武士階級が年貢米を全部食べてしまえるはずもない。他国を見ても1つの政権が265年も続いた例など世界史上にもない。江戸時代の評価に問題が多いのは明らかではないだろうか

▼近頃も談合疑惑などの報道が相次ぎ、建設業界のイメージははなはだ芳しくない。しかし不祥事はあくまで特異な分子に過ぎず、大半の健全な建設業者の貢献が評価されないのはいかがなものか。普通のことと特異なこととを分けて考える−それが常識というものだろう。 (水・KK)

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