コラム

2017/03/03

彼女の無事を願いながら(茨城・KN)

彼女の無事を願いながら


▼東京に住んでいたころの話だ。彼女は隣に住んでいた。通勤時、よく姿を見かけたが最初は気にも留めなかった。だが、いつの日からか下宿先のドアの前で彼女が帰宅を待つようになった。最初は迷惑に感じて追い払っていたが、それでもやって来る彼女にいつしか根負けし、家に招き入れるようになった。そのうちに情が湧き一緒に食事をするようになり、彼女が来るのを心待ちにする気持ちが芽生えた。あらかじめコンビニで彼女のための食事を購入し、皿に盛り付けて振る舞う。すると彼女は嬉しそうに「ニャア」と鳴いた


▼車を日常的に運転するようになり1年が経つ。高速道路ではいまだに車線変更の際に緊張して手汗をかき、どきどきしながら走っている。それでも随分慣れてきたと思うが、一つだけどうしても慣れない事がある。車にはねられた動物の姿を見ることだ


▼動物が車にはねられることが珍しいと思っているわけではないが、運転していると「こんなに多いのか」と驚く。当事者となった経験はないが、走行中に突如動物が飛び出してきた場合、適切に対応できる自信はない


▼不可抗力であっても命を奪ってしまったときのことを想像するだけで、いたたまれない気持ちになる。その動物に飼い主や、かわいがっている誰かがいる可能性を考えればなおさらだ


▼東京から茨城に引っ越してからは一度も彼女に会っていない。だが車にはねられた動物の姿を目の当たりにすると放し飼いにされている彼女のことが気に掛かる。今も元気であることを祈りつつ、自分自身が誰かを悲しませることがないよう、日々安全な運転を心掛けたい。(茨城・KN)


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