コラム

2017/06/24

今あるものの価値に(茨城・KM)

今あるものの価値に


▼いつも背中を見ていた。幼稚園の時も小学校の時も、大人になってからも。「また水の中だね」。長男が言い、見えないと分かっていながら、柵に手を掛け水の中をのぞき込んだ。そして背中を見た。言葉も行動も、自分が子どもの時と一緒だ。陸(おか)に上がっている姿を初めて見たのはいつだったか。なんだか気恥ずかしかったのは覚えている


▼茨城県日立市かみね動物園の雌のカバ「バジャン」が死んだ。享年54歳で、人間だと95歳前後だという。幼稚園や小学校の遠足などに多く利用されるかみね動物園の人気を四半世紀にわたり支え続けた


▼なぜバジャンの背中を見ることが多かったのか。調べてみると、カバは皮膚が厚く、汗で体温を調節する機能がないため、日中の暑い時間は水中で過ごし、夜になると陸上で草を食べるとのこと。水中から出てこない様子に痺れを切らした子どもたちが「おーい!出てこーい!」と叫んでいる姿をよく目にしたが、バジャンからすれば「私にカバわないで(構わないで)」という気持ちだったのかもしれない


▼明治がスナック菓子「カール」の東日本における販売終了を発表し、近所のスーパーなどから、あっという間に消えた。ポテトチップスの販売休止・終了の時もそうだ。買い占めが相次いだ。失って初めてその価値が〝分カール〟


▼かみね動物園にはバジャンの末娘「チャポン」がいる。カールも西日本地域での販売は継続する。私たちはそろそろ肝に銘じた方がいいのかもしれない。今あるものが当たり前ではないということを。いつものように手遅れになってから騒ぐことがないように。(茨城・KM)


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