コラム

2017/08/05

経験に学び備えること(茨城・KN)

経験に学び備えること


▼医師の日野原重明(ひのはら・しげあき)さんが7月18日に亡くなった。105歳だった。100歳を超えても現役の医師として活動し、執筆や講演などの活動にも精力的に取り組んでいた


▼日野原さんは1911年、山口県で生まれた。41年より聖路加国際病院に勤務。54年に同病院が国内の民間病院として初めて人間ドックを導入した際は、内科医長として尽力。予防医学の普及に大きく貢献した。ベストセラーとなった「生きかた上手」をはじめ多くの著作を執筆したことでも有名だ


▼日野原さんのエピソードで特に印象深いものがある。92年、同病院は新病棟を建設。日野原さんの意向で広大な礼拝堂やロビー、ホールなどを配備した。過剰投資ではないかとの批判もあったが、その評価を大きく覆す事件が3年後に起こる。地下鉄サリン事件だ


▼過去に例のない大規模なテロ事件で多くの患者が緊急搬送されると、院長の日野原さんは外来の中止と患者の無制限受け入れを決定。広大なロビーや礼拝堂を応急処置の場とすることで多くの患者を治療することができた。日野原さんは戦時中、空襲で満足に治療もできない環境を目の当たりにしたことから、災害時の緊急医療に対応できるような病院を作ったのだという。過去の経験を糧にし、備えを怠らなかったことが多くの命を救うことにつながった


▼近年、国内で大規模な自然災害が頻発している。ことしは九州北部や秋田で豪雨災害が発生した。これからも同様の災害は起きてしまうものだと考えるべきだろう。日野原さんのように、経験に学び十分な備えを怠らない姿勢を行政にも期待したい。(茨城・KN)


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