コラム

2018/04/03

腑に落ちる表現目指し(茨城・TI)

腑に落ちる表現目指し


▼思うに、表現するということほど難しいことはない。文章として、自分の見たもの、聞いたものを伝えきれず、力不足に悩むことも多い。文字や言葉にしようとすると、途端に味気ないものになり、一文字違うと意味が百八十度変わることもしばしば。記者の端くれとして、精進する毎日だ


▼そこで一つ、気になった話題がある。とある論争に関するもので、その回答が非常に秀逸に感じた。それは、ことし1月に行われた大学入試センター試験における出題科目「地理B」で、アニメキャラクターと、舞台となった国の言語の組み合わせを答える問題だ


▼設問では、人気キャラクターのムーミンとフィンランド語の組み合わせを正答としたが、作者のトーベ・ヤンソンは同国出身であるが、ムーミンが住むムーミン谷の舞台については物語上で言及されていないことから「組み合わせが正しいとは限らないのではないか」「スウェーデンも候補となるのでは」などと論争に発展した。これに対するフィンランドのティモ・ソイニ外務大臣の回答が「一人一人の心の中にある」だった


▼この回答を知ったとき、創作物なのだから「それはそうだ」と思わず笑った。受験者や出題者でそれぞれ言い分があり、問題の正解不正解については議論が続くはずだ。ただ、個人的にこれ以上の答えはないのではないかと思う。これほど腑に落ちる表現はほかにない


▼一言で伝えることができれば、それに越したことはない。日々工事情報を紙面で伝える身として、これからも分かりやすい、読みやすい記事を心掛けたい。腑に落ちる表現をできてこそ、記者の本懐である。(茨城・TI)


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