コラム

2018/09/06

人と人とをつなぐ架け橋(群馬・YY)

人と人とをつなぐ架け橋


▼国内での新聞や雑誌の発行部数は、弧を描くように下降線をたどっている。その要因は、人口減少による市場縮小、ネットメディアの普及などが挙げられる。逆風が吹き荒れる中、先人が築いてきた出版の灯を守り続けようと多くの人々が日々奮闘している


▼昨年、神奈川県三浦市の三崎漁港を訪れた際、三崎港報という地元新聞社の方とお話しをさせていただく機会があった。同紙は主に市政情報や学校行事などを掲載する日刊紙。港報という題号は、かつて漁業関連の記事を中心に扱っていたことに由来する


▼通信技術が未発達の時代、遠洋へ長期間にわたり出漁する漁師の消息を知るすべはないに等しかった。そのため入電する無線をもとに各漁船の位置を報じ、家族たちに無事を伝えていた。見せていただいた紙面にも「ケープタウン入港中」や「操業中南緯○度○分…」などの文字がある


▼長らく港町三崎の報道機関として各所をつなぐ役割を果たしてきた同紙だったが、遠洋漁業の衰退や衛星電話など新たな通信手段の登場により発行部数は減少傾向にある。漁業関連の記事も水産物市況などを残すのみとなった。そのため近年は、より地域に密着した情報紙へと舵を切る。訪れた日の紙面トップも三浦市の無形民俗文化財に指定されている「面神楽」の発表会に関する記事だった


▼小高い丘の上にある社屋からは三崎の街が一望できる。輪転機の傍らで「求められる限り続けていきたい」と社員の方が話す姿が印象的。帰り際、朱塗りの城ヶ島大橋が視界に入る。新聞も同橋と同じく、人と人との架け橋になっているのだと思った。(群馬・YY)


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