コラム

2018/09/15

工期と価格優先なら人災(茨城・KS)

工期と価格優先なら人災


▼あまり報道されていない建設事業での大事故がある。7月23日、ラオス南部のアッタプー県で、韓国のSK建設が施工中のダムが決壊した。8月5日の時点で死者34人、行方不明者100人以上に上った。そのほか莫大(ばくだい)な家畜や農地も失われた。さらに隣国のカンボジアでも約2万5000人が避難しており、大惨事の様相である


▼同ダムの建設事業は約1100億円の国家的ビッグプロジェクトで、2012年に入札があった。日本企業も参加していたが、SK建設は「日本より安く、短工期で完成させる」として落札。工期を当初の計画から5カ月短縮し、19年2月からの運転開始を目指していた。なお工期短縮のボーナスとして発注者から約22億円が支給されたという


▼ラオスでは別の場所で、日本の大林組が「第二の黒部ダム」と称されるダムを建設中で、同じく19年2月の運転開始が予定されている。SK建設は大林組に対抗して工期を前倒ししたという話もある


▼工期短縮のためにはそれなりの調整がいるはずだ。決壊したダムは盛土式のアースフィルダム、大林組のものは重力式コンクリートダム。雨季が長く軟弱地盤のメコン川流域にどちらが適しているかは不明だが、ラオス政府は「低水準の建設が事故の原因」とし、韓国に特別補償を求めている。これに対しSK建設は「降り続いた大雨が原因」と主張し責任はないとしている


▼情報が少なく決壊の原因を特定することは難しいが、土木技術の集大成ともいえるダム事業で安全よりも工期や価格を優先したということであれば「天災」ではなく「人災」といえるのかもしれない。(茨城・KS)


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