コラム

2018/11/09

ダムの堆砂に危機感を(新潟・SS)

ダムの堆砂に危機感を


▼岡山県倉敷市などで多数の犠牲者を出した7月の西日本豪雨。氾濫河川の急激な水位上昇は上流ダムの放流が原因ともいわれる。しかし大雨でダムに流入する水が増加し、危険水域を超えた中の緊急放流はダムの決壊と天秤にかけた苦渋の決断だったはず


▼一方、新潟県の上越地区では今夏、少雨と猛暑で天水に頼る中山間地域を中心に、稲が枯れるなどの干ばつ被害が発生した。同地域を流れる一級河川の関川では流量が減少し、農業用水は許可権量の半分ほどしか取水できない状況となり、上流の笹ヶ峰ダムと野尻湖では、かんがい放流を実施した


▼上越地区の農業用水を支える笹ヶ峰ダムは2014年から大規模なダム改修に着手、23年完成を目指し工事を進めている。その笹ヶ峰ダムは改修工事とは別に貯水池内の堆砂が大きな問題となっている。ダムの計画堆砂量は100年間に流入する土砂の量で決められているが、同ダムの堆砂量はその1・5倍にまで達している。受益面積5830haを支える水源としては、3年後の21年の渇水期(8月)からは不足する可能性も


▼有効貯水量を確保するには約100万立方mの堆砂を除去しなければならない。スラリー浚渫(しゅんせつ)の場合、約50億円ものコストが見込まれる。莫大な土量をストックするヤード整備のほか、浚渫した土をどのようにリサイクルするかなど、さまざまな検討も必要となる


▼農業用水を確保しつつ下流部の洪水被害を防ぐためにも、ダム堆砂対策に関する技術的・体系的なシステム整備と問題意識の共有が重要だ。ダムの堆砂問題には速やかに対策を講ずる必要がある。(新潟・SS)


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