コラム

2019/04/16

一瞬と一生の仕事(埼玉・YM)

一瞬と一生の仕事


▼水が止まった。水道料金を支払っていなかったとか、寒さによる凍結とかではない。なぜか朝から水が使えなくなっていた。自治体水道課に問い合わせるが的を射た返事はこない。アパートの管理会社に電話してもなかなかつながらない。水が使えなければ、朝の準備であるトイレも歯磨きも何もできず、お手上げ状態だ


▼やっと管理会社と連絡が取れる。「担当者に確認と連絡をさせます」と受付の人に言われたが、1時間以上経過しても電話が鳴らない。仕方なくこちらから催促の電話をすると「担当者は別のお客さんの内見に出掛けました」と返答があった


▼しばらく経ってから管理者から連絡を受けた水道業者がアパートに到着した。原因は受水槽の漏電。建設新聞の記者として日ごろから受水槽更新などの記事を書いていたが、実際に老朽化による故障を体験し、設備管理の重要性を思い知った


▼一方で管理会社の対応に疑問を持ったのも事実だ。担当者がいくつも仕事を抱えていて日々忙しいのは重々承知している。緊急的な問題に対処する苦労も分かる。修理は業者にしかできないため、担当者の仕事は入居者・会社・事業者と密に報告連絡相談することが主な仕事となる。電話一本でもくれたら印象がかなり違っていただろう


▼不動産業は部屋を売るのではなく、生活空間を売る仕事だ。そして賃貸契約は一瞬で終わるが、入居者が生活する限り責任を負う。売って終わりでは決してない。むしろ売れば売るほど責任は蓄積・増大する。全分野で言えるが、仕事とは「相手に価値を提供して喜んでもらい、対価に相応の責任を背負う」ものだ。(埼玉・YM)


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