コラム

2019/10/09

好きなものは役者か作品か(埼玉・YM)

好きなものは役者か作品か


▼あるバラエティ番組を見た。ゲストで登場した人物は、どうやら主演を務めるドラマの番組宣伝で来たみたいだ。番宣番組を見ると「古いやり方」と思わざるを得ない。今の時代、出演者の名前で視聴者が釣れることは珍しい。娯楽が数多く溢れる中、大多数の視聴者を引き付けるには「誰が出演する」と言った上辺の情報ではなく、「どんな内容なのか」など確かな中身が大事となる


▼もちろん好きな役者が出演するから視聴する人もいるだろう。好きな役者の作品であれば、何でも高評価する人たちだ。他者からの批判を絶対に許さないと言わんばかりに、作品の良さをアピールする傾向にある。役者を好きになるきっかけは、劇中の演技が気に入ったからに違いない。しかし、いつの間にか作品の良し悪しが関係なくなっている


▼「上辺を見るか、中身を見るか」は、とどのつまり個人の自由だ。しかし社会全体のレベルで見ると、上辺だけを追いかけていては、国の経済成長、豊かな文化は見込めない。建設業界を例にとれば、おしゃれできれいなビルを設計・施工したとしても、入居者の使い勝手を考えていなければ、入居者は別の建物へ転居するだろう


▼良いものは「良い」と褒め、悪いものは「悪い」と伝えることが大事になる。役者に限らず、制作者は何をしても褒められると慢心が生まれ、堕落しやすい。結果的に制作者、視聴者の双方にとってプラスにならない


▼設計者のエゴを押し通した建物は、現場を無視して実用性を伴わない。砂上の楼閣と揶揄(やゆ)されるほどだ。役者と同様に建物も、名建築にするか、廃虚にするかは上辺ではなく、中身だ。(埼玉・YM)


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