コラム

2021/02/27

裏打ちされた創造力(新潟・CY)

裏打ちされた創造力


▼どこへも行けない。冒険の書を夜な夜なめくる。アメリカ大陸を北極から南極まで、人力踏破に挑んだ本だ。名も知らぬ南米の町や市場の描写に想像を膨らませる


▼そんな折、知人から作品集が届いた。時の首相に妖怪アマビエ、新潟の花街を彩る古町芸妓(げいぎ)が描かれている。全てパンに描かれたトーストアートだ


▼作者は某スーパーゼネコンで辣腕(らつわん)を振るう人物。あるときはトーストアーティスト、あるときはシティガイド、そしてまたあるときは宇宙人…? SNSをのぞいたら、トーストではなくカレーがあった。よく見るとそれはダムを模したダムカレー。キュウリで蓋をしてあり、放流まで完璧だ。「次はスープカレーで砂防堰堤ですか?」と尋ねれば「やってみます」との返事


▼そういえば氏は、明治の日本を旅した英国の冒険家、イザベラ・バードの研究者でもある。バードが通ったであろう小阿賀野川周辺をガイドする。バードは新潟には上陸していないが、この景色を見たのかなと想像を巡らせる。すると全く違った新潟が見えてくるという


▼バードのミニレクチャーの際、解説用データを忘れてきてしまったことがあった。ここからが底力。ホワイトボードに関係する人物の顔やら地図やらを描き上げた。土壇場でも無から生み出す瞬発力。ゼネコンで培った技はもとより、日頃のフィールドワークや手数に裏打ちされたものに他ならない


▼作品集の隅には「閉じこもりがちの昨今、くすりと笑っていただければ」とあった。まちを愛し、まちを知り、まちを創る人。そして何よりも、誰かを喜ばせることに余念がない人。そんな建設屋がいる。(新潟・CY)


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