コラム

2021/06/01

哀愁の道路に思う(山梨・OS)

哀愁の道路に思う


▼お気に入りの女性と食事をした後、しばしドライブ。送ることを考え、その女性の家がある方面に向かった。会話に夢中になりながら当てもなく走る。いつしか山間部へと向かう1本道に入っていた。道幅が徐々に狭くなり、カーブはクネクネ。しばらく行くと舗装がなくなり、小石を踏みながら走る車は揺れまくった


▼気分が悪い。小さいころから乗り物酔いはしやすい方。さっきまで盛り上がっていたのがうそのように口数が減っていった。だが気分が悪いことを悟られては格好が悪い。開けた場所でUターンして帰ろうと決めた。平静を装い適当な場所を探す。だが道はずっと狭いまま。限界は急に来た


▼車を突然止めると、女性は戸惑った表情。最後の力で薄ら笑いを浮かべ、「ちょっと気分が…」とだけ言い残し、車を飛び出した。できるだけ女性から見えない所へ向かったが、明らかに女性は引いていた。その出来事があってからというもの女性は急に仕事が忙しくなり、連絡は途絶えた…


▼あれから20年。山梨県丹波山村方面へ行くために、同じ国道411号を車で走っている。広くてきれいで線形も緩やか。途中、ツーリングを楽しんでいるであろうバイクの集団と何度かすれ違った。以前はこうした光景も少なかったのではなかろうか


▼1988年に道路改良に着手してから30年余り。幾多の難工事を乗り越え、ついに本年度で完成を迎える。あの時こんな素晴らしい道路があったなら。そんなことを思いながら車を走らせる。新しい道路もさまざまな人々の生活に寄り添い、思い出に刻まれるのだろう。(山梨・OS)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら