コラム

2021/06/12

その2秒にかける(新潟・CY)

その2秒にかける


▼「一緒に地上絵を描きたい」。その連絡に一同仰天した。新潟市で巨大地上絵を描き、飛行機から見てもらう。そんな活動を続けるサスノグリフスのもとに、空で働く日本航空(JAL)新潟支店からのオファー


▼相次ぐ予約のキャンセル、減便に次ぐ減便。コロナ禍で苦戦を強いられる同社だ。そこを逆手に取り、今できることを模索する。新潟支店、空港スタッフからなる「チームにいがた」で、空港脇の阿賀野川河口と海の漂着ごみを拾い、空の玄関口を彩りたいという


▼空港付近であるため、現場はドローンの高度規制の対象区域。天候による着陸侵入経路の変更なども懸念される。そして着陸態勢の飛行機から、目視で地上絵を捉えることができるチャンスは、わずか2秒ほど。果たして機内から撮影することができるだろうか。さらに阿賀野川河口は、航空機進入灯更新に向けた浚渫(しゅんせつ)工事の真っ最中。発注者・施工者と打ち合わせを重ね、工事進捗(しんちょく)をにらみながらどうにか活動の許可が出た


▼自然の力で堆積した土砂をポンプでくみ上げ、海岸の痩せた砂浜へ移動させるという。途方もない砂の山に呆然としていたが、初回の打ち合わせからほんの2カ月で、陸地の形が大きく異なり、高い技術力にうなった


▼河川管理者、航空局、施工者の寛大な高配と協力を得て、決行は来る6月末の日曜日。うわさを聞きつけたドローン操縦者も駆け付ける。キャンバスとなる砂浜で、拾えるゴミは全体の何%にも満たず、お金を生むわけでもない。80m超えの地上絵は大きすぎ、描く本人たちにも全く見えない。しかしそれぞれが、その2秒にかけている。(新潟・CY)


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