国土交通省 石井大臣インタビュー
石井啓一国土交通大臣が建設専門紙記者会の共同インタビューに応じ、公共投資予算を計画的・安定的に確保することで建設産業の中長期的な展望が開けるようにすることや、今後の社会資本整備のあり方を大きく転換する見通しなどを語った。また、基礎杭工事問題で浮き彫りとなった建設業界の構造的な課題に対応するため、将来像を見据えた早急な対策に取り組むことで「力強い一歩を踏み出すための一年」を目指す考えを示した。
―建設産業の中長期的な展望について。
石井 建設産業は長年、建設投資の削減が続き、厳しい状況に置かれてきたが、ここ数年は建設投資の回復もあって技能労働者の数も増加に転じるなど少しずつ活気を取り戻しつつある。建設産業が中長期的な役割を担い続けるためには各企業が将来の見通しを持てることが大切。インフラの整備や維持管理などの仕事が安定的・持続的に確保されることで設備投資や人材の確保ができる。そのためにも国土交通省の公共投資の予算を計画的・安定的に確保していくことが重要となる。
今後は特に中高年世代の大量離職が予想されるので、若い人が入ってくる魅力ある職場を目指して、適正な賃金水準の確保や社会保険の加入促進など処遇の改善が必要となる。技能労働者の経験が蓄積されるシステムの構築や、「担い手3法」の趣旨の徹底を図り「歩切り」の根絶、ダンピング対策の強化も進めていく。
また、基礎杭の問題では杭工事の適正な施工にとどまらず、背景にある建設業界の構造的な課題も指摘されている。将来にわたって建築物の安全と品質の確保を図る上で、工事全体に関する元請けの管理責任のあり方、主任技術者の適正な配置など元請け・下請けによる適正な施工体制を構築することが必要だと思う。実行可能な政策は直ちに実行し、検討が必要な施策は速やかに議論を開始する。建設業の将来像を見据えて早急な対策を講じていきたい。今年が建設業にとって力強い一歩を踏み出すための一年となるよう建設業界と力を合わせて取り組みたい。
―今後の社会資本整備の方向性について。
石井 財政が非常に厳しく、公共投資を大きく伸ばすことが難しい中で、社会資本整備のあり方を大きく転換していくため、「賢く投資、賢く使う」インフラマネジメント戦略の展開を図る。過去の投資効果をわずかな投資で開花させるために「ストック効果開花プロジェクト」への重点的な投資を行う。また、測量、設計、施工、検査のあらゆるプロセスにICTを導入して生産性を高める「i-Construction」を進めていきたい。
2016年度の当初予算案で国土交通省の公共事業関係費は15年度を上回る5兆1787億円を確保した。15年度の補正予算と合わせて16年度当初予算が少しでも早く効果を発揮できるように予算の早期成立をお願いし、予算成立後は最新の資材価格等を反映した予定価格の適切な設定、発注の平準化などによって効率的かつ円滑な事業実施を図っていきたい。
―空き家対策の今後の見通しについて。
石井 空き家対策は利用できるものは利用し、除却しなければならないものは除却することが基本的な方針。今年は空き家対策特措法に基づいて多くの市町村で計画が策定されるため、予算・税制ともに新しい制度で応援していきたい。
―「一億総活躍社会」実現に向けた主な取り組みについて。
石井 三世代の同居・近居では中小の工務店等が三世代同居に対応した良質な木造住宅を新築する場合の補助制度を15年度の補正予算で創設する。サービス付き高齢者住宅(サ高住)の整備については、15年度補正で約1万5000戸・2万人分の追加供給をすることで、一層の整備推進を図りたい。特に地域のサービス拠点を併設するサ高住、既存ストックを改修するサ高住への補助を拡充するなど、重点的な支援を行っていく。