(独)都市再生機構 杉藤理事インタビュー
国土交通省からUR都市機構のウェルフェア・ストック事業等担当理事に就任した杉藤崇氏。若い人と高齢者がコミュニティを形成し、支え合いながら生活する住環境を目指す。実践できれば社会的意義、インパクトは大きいと話す杉藤氏に今後の取り組み方針などを聞いた。
―就任しての抱負は
杉藤 3月に住生活基本計画が閣議決定し、住宅ストックを活用し、若い人からお年寄りまで地域と連携しましょう、住み慣れた住宅で医療や介護が受けられる世の中にしようと方向性が出された。医療・福祉の拠点化を2026年度までに150団地つくるという全体目標も設定された。これをしっかり進めたい。
UR団地の特色は、民間と比べて住戸そのものは古いが基本性能はしっかりしていて、広さもある。団地の環境がいい。平均5000戸と規模も大きい。さらに、特に高齢化が進んでいる大都市圏近郊に多くあり、立地面でも役に立てる。
―どのような取り組みを進めているか
杉藤 在宅医療のための診療所をつくるなどの拠点づくりを進めている。現在47団地で着手しており、今後も広げていく。年間20団地ずつくらいのペースで目標達成に向け取り組みたい。
一方で、いわゆる「子育てUR」として割引などで若い世代の居住の安定や子育て支援も行っている。高齢者も含めてミクストコミュニティの形成を進めている。
―課題は
杉藤 すべて手探りでモデルをつくっているところ。ただ、官と民の間のいいところを具体的に実践して、この取り組みがうまくいけば社会的インパクトはあると思う。例えば、大学と連携して、大学生が高齢者の生活を支える、切れた照明を取り替えに行くとか、そういう活動が進むよう、ソフト面での仕掛けづくりも進めている。
団地はコミュニティがつくりやすい。医療福祉や保険ではやれない部分を具体化できれば世の中のモデルになっていく。
今後は、取り組みを継続させるためにビジネスとして回していく道があるのか。きっかけづくりで後は自発的な取り組みとして継続させられるのか。両方をにらみながら進めていく。
(プロフィール)
すぎとう・たかし
1962年愛知県出身。84年京都大学工学部出身。翌年建設省採用。住宅局の各課を歴任し、12年には同局市街地建築課長に就任。14年には大臣官房審議官(住宅担当)。16年6月から現職。好きな言葉は、「多様な価値観を認め合う」。