インタビュー

2017
2017/11/17
電設協 後藤清新会長新任インタビュー「人材確保、地位向上へ」
2017/09/15
国土交通省 野村正史国土政策局長インタビュー「付加価値生み続ける国土形成を」
2017/09/12
国土交通省 出口陽一建設市場整備課長インタビュー「処遇改善へ好循環を」
2017/09/07
国土交通省 鈴木英二郎大臣官房審議官就任インタビュー「建設業の働き方改革に期待」
2017/09/06
UR都市機構 吉田滋東日本賃貸住宅本部長就任インタビュー「住宅は国民共通の財産」
2017/09/06
国土交通省 奈良平博史国土交通審議官インタビュー「企業の国際化対応が重要」
2017/09/05
UR都市機構 田島満信住宅経営部長就任インタビュー「選択されるURへ」
2017/09/05
国土交通省 伊藤明子住宅局長インタビュー「空き家対策で予防と活用も」
2017/09/01
国土交通省 由木文彦総合政策局長インタビュー「バリアフリー法改正も視野」
2017/08/26
国土交通省 青木由行大臣官房建設流通政策審議官インタビュー「当事者意識で取り組みを」
2017/08/25
国土交通省 田村計土地・建設産業局長インタビュー「健全で魅力ある産業に」
2017/08/10
国土交通省 吉田光市国土交通審議官インタビュー「元気な中小企業を支える」
2017/08/09
日本建設機械レンタル協会 角口会長インタビュー「働いてみたい業界に」
2017/08/04
日建連 尾崎勝建築設計委員長インタビュー「多様化がキーワード」
2017/08/04
国土交通省 毛利信二事務次官インタビュー「担い手確保の取り組みを応援」
2017/07/21
野村康幸JC次期建設部会長インタビュー「情熱を持って会員拡大を」
2017/07/19
日建連 水島久尾土木工事技術委員長インタビュー「技術の伝承とレベル向上を」
2017/07/11
全中建 豊田新会長インタビュー「処遇改善など図る」
2017/07/06
国土交通省 平田研・建設業課長インタビュー「自分の言葉で建設産業の未来語って」
2017/06/16
田中良生国土交通副大臣インタビュー
2017/06/14
土木学会 大石久和新会長インタビュー「土木が危機」
2017/06/09
建コン 村田新会長インタビュー「納期平準化が課題解消に繋がる」
2017/06/09
橋建協 坂本眞新会長インタビュー「魅力ある業界アピール」
2017/06/08
関東地方整備局 東川直正企画部長インタビュー
2017/05/31
UR都市機構 山澤正 多摩・神奈川地域本部長就任インタビュー「ミクストコミュニティ形成を」
2017/05/30
日建連 押味建築本部長インタビュー「安全・安心を優先」
2017/05/29
日建連 山内新会長インタビュー「建設業の評価を高める」
2017/05/24
国土交通省 技術調査課電気通信室長・末吉滋氏「若い人も電気通信に興味を」
2017/05/24
UR都市機構 田中伸和・東日本都市再生本部長就任インタビュー「公共との調整役へ」
2017/05/23
UR都市機構 村上卓也ストック事業推進部長就任インタビュー「団地を街の拠点に」
2017/04/19
国土交通省 内田欽也大臣官房地方課長就任インタビュー「社会保険の不公平感無くす」
2017/04/06
国土交通省 森昌文技監インタビュー「技術の進歩を現場に反映」
2017/03/17
国土交通省 大臣官房技術審議官 五道仁実氏インタビュー「新3Kの業界へ変える」
2017/01/06
国土交通省 石井啓一大臣新春インタビュー「生産性革命「前進の年」に」
2017/06/16

田中良生国土交通副大臣インタビュー

 地域建設業の未来、アイ・コンストラクションの展望などについて、田中良生国土交通副大臣に考えを聞いた。2017年は生産性革命「前進の年」としてICT施工を土工のみならず舗装、浚渫、橋梁工に展開することや、地域建設業の支援を重視する点を強調。週休2日のモデル工事については2000件程度で試行する方針を示した。また建設投資の急激な減少は地域建設業を疲弊させることから、安定的な予算確保が重要と唱え、努力していく考えを強調した。


 ―アイ・コンストラクションの展望と地域企業への展開について


 田中 国土交通省として生産性革命を進めています。人口減少社会になり労働力が減少するのを、指をくわえて見ているわけにはいきません。労働力の減少を上回る生産性の向上ができれば、引き続き経済成長を持続していけると考え、昨年は「生産性革命元年」と位置付けて、施策のあらゆる面で生産性向上を目指しました。今年は「前進の年」と位置付け、さらなる取り組みを進めているところです。

 アイ・コンストラクションは、生産性革命の中でも大変重要な施策です。建設生産のプロセス、例えば調査、測量、設計、施工、検査、維持管理、更新など全ての過程においてICT(情報通信技術)などを活用して、建設現場の生産性を2割向上させることを目指す取り組みです。昨年度は15種の新基準、積算基準を策定し、直轄工事でICT土工を開始しました。全国で584件実施されていますが、このうち8割以上は地域の建設業による施工となっています。結果についても全国から非常に前向きな報告をいただいています。埼玉では、例えば吉川の堤防整備工事でICT土工が実施されています。UAV計測や、MCブルドーザーを取り入れることで工期が短縮できたということです。重機の稼動エリアにおける測量も減少し、重機との接触リスク、事故の低減にもつながったという声が寄せらています。またICT土工などに関する講習会を開催しており、全国468カ所、3万6000人以上の方に参加していただき、着実に浸透が図られています。

 そしてさらに、今年度は前進の年ですので、土工のみならず舗装や浚渫、橋梁工事にも取り入れていこうと進めています。このほか講習や実習を継続して、良い事例を全国に共有していきます。各整備局に相談窓口も設置しました。地域建設業の支援がとにかく重要と考えており、継続していきます。魅力ある建設現場をつくっていかないと、次の担い手が減ってしまいます。アイ・コンストラクションを進めることで「給料が良い」「休暇が取れる」「希望が持てる」という新3Kを実現したいと考えています。


 ―建設業における週休2日定着に向けた考え方は


 田中 政府では働き方改革を進めており、実行計画を作成しました。その中で建設業も時間外労働の上限規制を見直そうということが決まりました。建設業でも大きく働き方を変えるように舵を切ったところです。将来の担い手を確保、育成していくために大変意義深いことだと考えています。長時間労働を是正することは重要ですし、週休2日をしっかり取れるように、休日確保を併せて進めていきたいと考えています。

 国土交通省の取り組みとしては、2014年度より週休2日のモデル工事を進めてきたところです。昨年度は対象824件を発注し、このうち165件で実際に週休2日に取り組んでいただいています。そのためにも、適正な工期の確保が必要です。工事の準備や片付け期間などの細かい実態をみることと併せて、適正な工期を設定する革新的なシステムを導入しました。加えて、現場管理費や共通仮設費に関しても適正な費用が確保できるように、経費率を補正します。今年はさらに環境を整備したいと考えています。今年度はモデル工事を2000件くらいに拡大したいと考えています。受注者の皆さんに積極的に取り組んでいただくことも重要となります。こうした直轄工事の取り組みを地方公共団体にも広げていくように推進していきます。また建設業界のみならず、発注者の理解、協力が必要ですから、国交省がリーダーシップを取って、環境整備に力を入れます。


 ―建設業の魅力を高めるために必要なことは


 田中 技能労働者の処遇改善、社会保険加入、女性が活躍できるような環境整備、またしっかり予算を確保していかなくてはいけないと思っています。適正な賃金水準という部分においては、公共工事の設計労務単価を5年連続で引き上げました。建設業団体に、適切な賃金水準の確保を要請しています。社会保険の加入も重要なことだと思っています。5年前から対策を進め、加入率も着実に上昇している状況にあります。直轄工事では2次以下の下請も保険加入企業に限定しています。同様の取り組みを地方自治体にも求めていきたいと考えています。保険加入に関しては、制度や手続きが複雑で大変な部分もありますので、都道府県の社労士会にお願いして、相談窓口をつくっていただいています。

 今後は加入の原資となる法定福利費をしっかり確保できるように、標準約款の改正を含めて、福利費の明示を定着させる対策を検討していきます。また技能労働者が適正な評価と処遇を受けられるように、キャリアアップシステムの構築をを官民と連携して進めていきます。

 女性の活躍に向けては、現場のトイレについての要望が多いので、洋式や鏡付洗面台を標準仕様していこうということで、快適トイレの取り組みを進めています。昨年の10月から原則化して、埼玉県内でも7件の工事で導入している状況です。女性の更衣室も、清潔な労働環境の面で重要です。経費も掛かりますので、工事積算の経費率について見直しました。

 地元の建設企業も将来に不安がないようにしなければなりません。そのためには安定的で持続的な公共工事発注が重要ですし、予算の確保にしっかり取り組んでいきたいと思います。


 ―埼玉県の建設会社にメッセージをお願いします


 田中 埼玉の建設投資量は横ばいとなっています。2011年度から増加しており、近年は堅調に推移しています。県内建設会社の営業利益率も改善している状況にあり、これからも持続していくためには、担い手3法で規定された適正な利潤確保が重要です。また歩切りは品確法違反であることが明確になりました。埼玉でも、2016年4月には歩切りをしている市町村が20団体ほどありましたが、今はゼロになりました。歩切りは各団体で見直していただくことになりました。またダンピングについても、低入札調査制度や最低制限制度が全ての自治体で導入されているという状況に改善されました。こうした取り組みをPRしていくことが重要で、コミュニケーションを地元の協会などとも詰めているところです。

 建設投資の急激な減少や受注競争の激化は、地域の建設業者を疲弊させることになります。近年は災害も増えており、発生時には地域の建設業者の皆さんにすぐ動いていただいています。地域の安心・安全の確保という意味でも建設業は大切で、疲弊することがないようにしていきたいと考えています。建設投資に関する基本的な考え方として、第4次社会資本整備重点計画が2015年9月に閣議決定されました。その中では公共投資の安定的な持続確保が、社会資本整備の担い手としての技能人材の確保、育成につながるとしっかり位置付けられています。今後とも安定的な予算確保に向けて努力していきます。


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