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建設業労働災害防止協会千葉県支部

「重篤無災害継続」を心に/建災防かずさ分会が説明会/第90回全国安全週間準備期間

2017/06/15 日刊建設タイムズ

 建設業労働災害防止協会千葉県支部かずさ分会(松本信夫分会長)は7日、木更津市内のかずさ建設会館において「2017年度全国安全週間実施要領説明会」を開き、会員50人余が出席した。木更津労働基準監督署の阿部裕之署長からのあいさつをはじめ、鈴木毅・安全衛生課長と上村隆一・産業安全専門官による「全国安全週間実施要綱説明及び労働災害の発生状況等」の説明のほか、ミドリ安全㈱セフティ&ヘルス統括部の三橋綾史次長を講師に、フルハーネス型安全帯デモを含む「墜落・転落災害防止について」の講話で構成した。全国安全週間は「人命尊重」を基本理念として1928年から実施され、一度も中断することなく今回で90回目を数える。本年度のスローガンは『組織で進める安全管理 みんなで取り組む安全活動 未来へつなげよう安全文化』。6月1日から30日までを準備期間とし、7月1日から7日までを本週間として展開する。


 ◆7月1日からの本週間へ


 説明会に先立ち、主催者を代表して松本分会長は、この日の説明会について「雇用支援関係のポリテクセンター君津や、労働者健康安全機構の君津木更津地域産業保健センターのほか、安全・衛生・保安用品メーカーのミドリ安全などから我々に情報を提供して頂き、新しいものを取り入れながら、安全に対する造詣をより一層深めることが出来る」と強調。

 建災防千葉県支部については「10地区の各分会がそれぞれ切磋琢磨しながら、重篤な災害を起こさないような活動を進めている」と前置きしたうえで、かずさ分会が所属する木更津労基署管内において、昨年発生した4件の死亡災害が、いずれも建災防の非会員の事業場だったことに言及。「ひとえに我々建災防の会員は、組織に所属することでお互いに切磋琢磨し、安全に対する意識を向上させていることが、社員や外注先の方々にも伝達。『重篤な災害を起こさない』という結果に繋がっていると思う」と言明。「近隣において、建災防を知らない企業がいたならば、是非ともみなさんから、建災防の良さを伝えて頂ければと思う」と呼びかけた。

 また「経営者も安全担当者も、安全に対する教育を受けることで、安全意識をともに持ち合わせることが大事であり、それが社員にも伝わっていくものだと思う」と、経営トップ自らが安全意識を高め、率先して行動に移す必要性を指摘。さらに「教育はエンドレス。転落・墜落の死亡災害が多い中で、日々新しい安全・衛生・保安用品が生まれ、法改正も行われている。機能や性能も日進月歩であることから、旧態依然で良いのかという自問自答の中で、我々が直に触れることも大事だ」との考えを示した。

 最後に松本分会長は「本日の説明会において、より一層の安全意識を高め、7月1日からの安全週間・本週間に臨んで頂きたい」と会員を鼓舞し、あいさつを結んだ。


 ◆重篤災害の防止へ日々リスクアセス


 引き続き、木更津労働基準監督署の阿部裕之署長が、まず、千葉労働局における2017年度の運営方針を説明。「長時間労働の抑制・是正」と「死亡災害の増加を踏まえた労働災害の防止」という、2つの最重点施策を掲げていることについて「長時間労働の抑制は、国を挙げて行う『働き方改革』から来ている。県内における本年4月末現在の死亡災害件数は17件で、昨年同期が8件だったことから倍増した」と厳しく指摘。加えて「これらの発生状況を踏まえて、3月1日から来年1月15日まで『なくそう死亡災害!運動ちば2017』を展開していく。それに向けた理解と協力を賜りたい」と要請した。

 一方で「建設業における死亡災害や、後遺症が残るような重篤な災害現場をこれまで何度も見てきた」と述べた阿部署長は、自身の経験から「これらの重篤な災害を発生させてしまうと、労働行政はもとより、発注者が国・県等の場合には指名停止などの措置がある。死亡災害の場合は、遺族から民事的な裁判の提訴もある。その災害が労働安全衛生法や刑法に触れるとなると、警察からは業務上過失のかたちで追及され、監督署からは司法的な問題も発生する。それにより、経営が立ち行かなくなってしまった事業所も何社かあった」と証言。

 さらに阿部署長は、建設業における重篤な災害が発生する場所として「高所作業を中心とする『墜落・転落災害』と、『重機との接触』というのがほとんどである」と指摘。「建設業特有の『作業現場が日々移動する』ことに、対策を立てることは非常に難しいことは重々わかる」と前置きし「それらを踏まえたうえで、日々のリスクアセスメントをして頂くことにより、重篤な災害が発生する場所は、十分に予想がつく」と断言。

 最後に「かずさ分会においては、死亡災害や重篤災害を発生させていないという状況を、是非とも続けて頂きたい」と呼びかけ、あいさつに代えた。


 ◆死亡休業災害で過去最少を記録


 全国の建設業における2016年の労働災害による死亡者数は294人で、過去最少だった15年の327人をさらに下回った。また、休業4日以上の死傷災害も1万5058人と過去最少を記録。しかし、震災の復興、国土の防災・減災に関連する工事の継続、東京オリンピック・パラリンピック、リニア中央新幹線等に関連する工事の拡大が見込まれていることから、工事量の増加とともに労働災害の増加が懸念され、労働災害防止対策の一層の徹底を図る必要がある。


 ◆三大災害と転倒/熱中症対策強化


 特に、死亡災害の中で高い割合を占める『墜落・転落災害』『建設機械・クレーン等災害』『倒壊・崩壊災害』の三大災害対策を徹底。また、作業員の高齢化に伴い、近年増加している転倒災害を防止するため『STOP!転倒災害プロジェクト』の継続、これからの「高温多湿」という厳しい作業環境下で多発が予想される、熱中症対策としての『STOP!熱中症 クールワークキャンペーン』等を、積極的に展開することが重要となる。

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