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2017年県内の建設事業を振り返る/リニア、中部横断建設進む

2017/12/29 山梨建設新聞

 2017年(平成29年)の本県の建設事業は、リニア中央新幹線や中部横断自動車道の建設など、本県発展への社会基盤整備が進んだ。県では、大型事業となるリニア駅周辺整備や総合球技場の基本計画策定への動きも始まった。一方で、8月の台風5号の影響で大月市で土石流被害が発生するなど、防災・減災対策の必要性が叫ばれた。しかし県内の建設投資は横ばいが続き、県建設業協会などからは公共事業費増額を要望する声が強まった年でもあった。県内の主要事業や建設団体の1年を振り返る。

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 【リニア建設】

 JR東海による南アルプストンネル山梨工区工事(早川町)、第四南巨摩トンネル新設工事西工区(早川町新倉)では掘削工事が進捗。地上区間を走行する甲府盆地でも用地取得へ向けた測量や調査などが進み、長大橋梁の設計も行われた。

 【中部横断自動車道】

 六郷IC~増穂IC間が本年3月に開通。その他の未開通区間も工事が進展し、18年度には新清水JCTから南部ICまでと下部温泉早川ICから六郷ICまでが開通の予定。

 一方、長坂~八千穂間は、県などが環境影響評価の手続きや早期事業化を繰り返し要望している。

 【リニア環境未来都市】

 県では、リニア駅が建設される甲府市大津町周辺を「リニア環境未来都市」として整備する方針をまとめた。11月には、駅周辺整備基本計画策定業務委託の公募型プロポーザルの手続きを開始。駅の周辺約26hは駐車場や観光交流・産業機能などの整備を想定する。

 【総合球技場の建設】

 県が甲府市の小瀬スポーツ公園第3駐車場に建設を目指す総合球技場では、整備基本構想を策定。今月には基本計画策定業務の公募型プロポーザルの手続きを開始した。サッカーやラグビーなどの利用を主に、収容人数は2万人程度を想定。整備・運営についてはPFI方式の導入を前提に検討する。

 【子どもの心のケアに係る総合拠点(仮称)整備事業】

 県が、甲府市住吉2丁目の職員宿舎跡地など1万4690㎡に建設を計画。こころの発達総合支援センター、児童心理治療施設、中央児童相談所、特別支援学校を一体的に整備する。規模は合計約6500㎡程度。

 久米設計・竜巳一級建築設計事務所JVが担当の基本設計によると、計画施設はRC造一部W造2階建て延べ約6600㎡。各施設は平面的に分離して配置。環境負荷対策として最新型のガスコージェネレーションシステムを導入する。設計作業は17年度末まで行い、18年度の着工を目指している。

 【新山梨環状道路東部区間】

 東部区間は県施行。1期工区では中央自動車道立体交差工事や(仮称)蛭沢川橋工事、用地取得を推進し、2期工区では設計を進めるとともに、一部区間では道路構造を盛土から高架へ見直すことを地元へ説明した。

 【甲府城周辺の整備】

 県と甲府市が、甲府城周辺地域活性化実施計画をまとめた。甲府城南側のお堀沿い約1万2300㎡を、「広場ゾーン」「歴史・文化ゾーン」「飲食・物販ゾーン」に分けて整備を行う。県と市が公共施設跡地を中心に先行整備を行う。エリア全体の整備完了は、リニア開業予定の27年を想定。

 【リニア建設による施設移転】

 リニアのルート上にある公共施設などの移転への動きも進んだ。

 甲府市では、中道北小学校の移転へ用地測量や土質調査、基本設計などを実施。

 中央市の田富北小学校では、初弾となる仮設校舎設計が発注された。

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 【リニア中央新幹線建設に伴う経済効果推進協議会】

 リニア建設段階の経済効果が県内にもたらされるよう、県内自治体や経済関係者で組織する「リニア中央新幹線建設に伴う経済効果推進協議会」は、「リニア建設は県内経済発展の好機」として県内企業の受注機会の拡大などを、8月に来県したJR東海の柘植康英社長へ要望した。調査・設計や工事での地元企業参入や県産材の活用などを訴えている。

 同様の要望は鉄道・運輸機構に対しても行い、県内企業の受注機会の拡大や県内産材料の積極的な活用などを求めた。

 【建設団体が公共事業予算の増額要望】

 県建設業協会をはじめとした県内の建設関係団体は、大規模自然災害に備えた防災・減災のためのインフラ整備事業の推進などを、国や県などに対して繰り返し要望した。

 建設業協会の浅野正一会長は、山梨県で建設業は基幹産業であり、山間地でもあるため、災害に見舞われると孤立や土砂災害の危険性が高い地域であり、地域建設業が県民の安全・安心を守るためには、公共事業予算の確保が必要不可欠と訴えている。

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