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関東ブロック初、県推進会議発足/建設職人基本法/18年度内に県版基本計画策定

2018/03/21 長野建設新聞

 「建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律」(建設職人基本法)に基づく長野県計画を策定するため、県建設工事従事者安全健康確保推進会議が16日に発足し、県庁で初会合を開いた。都道府県レベルでの推進会議の設置は関東甲信地区では初。国の動向も踏まえながら、2018年度中に県版の基本計画を策定する。

 昨年3月に施行された建設職人基本法は、公共・民間を問わず、建設工事に携わる者の安全と健康を確保するための各種施策を推進し、建設業の健全な発展を図ることが目的。昨年6月に政府が基本計画を策定し、秋には国土交通省の地方整備局を事務局として、全国8地域ブロックに推進会議が設置された。政府の基本計画では、努力義務として、都道府県にも政府の基本計画を踏まえた計画の策定に務めるよう規定している。

 長野県の推進会議は、県建設業協会、県建設労働組合連合会、県、厚生労働省長野労働局、国交省関東地方整備局で構成。会長に就いた長田敏彦県建設政策課長はあいさつで、「実効性のある計画を策定するためには、皆さまの協力と理解が不可欠。また、本会議は計画の策定にとどまらず、計画に掲げる取り組みを推進する組織としていきたい」と述べた。

 議事では、労働災害の発生状況や賃金、休暇などの現状について情報を共有するとともに、課題を整理した。

 本県の建設業就業者数は8万559人(2015年国勢調査)。労働災害の死傷者数は減少傾向にあるものの、墜落・転落などによる死亡事故が依然として発生しており、重大労働災害の根絶には至っていない。なお、昨年は休業4日以上の死傷者数が265人、死亡者数が5人となっている。災害の発生は29人以下の事業所に全体の9割が集中しており、小規模事業所における安全管理体制の充実が求められる状況。

 さらに、一人親方等の労働安全衛生法上の労働者に当たらない者への対処も大きな課題だ。昨年、全国で発生した一人親方等の業務中の死亡者数は75人。このうち約4割が労災保険特別加入を行っていなかった。議事では、一人親方等が自ら労働災害防止の対策を講じるためには、労災保険料を含む安全衛生経費の確保がなされるよう特段の配慮が必要とした。

 また、建設工事従事者の処遇改善に関しては、15年度に県が実施した県発注工事における労働賃金支払実態調査結果や、労連による一人親方の公共工事における賃金実態調査結果が示された。県の調査によると、技能労働者の平均賃金は1万5650円で、設計労務単価に対して85.5%の水準。労連の調査はさらに低い水準となっている。週休2日制を採用する事業所も5割未満にとどまっており、議事では「処遇の改善や技能・技術の振興を含めた地位の向上を図りつつ、中長期的な担い手の確保を進めていくことが急務」との認識を確認した。

 長田会長は会議後の取材で、関東ブロックの都県で初となる推進会議の設置について「安全にかかわることであり、スピード感を持って初動を行った」「民間工事への浸透も大きな課題」と話した。次回会合では、具体的な施策を含めた原案をまとめる予定。

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