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山梨県甲斐市

緑化センター跡地活用で地元説明会開催 事業内容に数多くの質問あがる

2018/10/10 山梨建設新聞

 県緑化センター跡地活用に関する住民説明会が3日、甲斐市役所で開かれた。市は「フラワーパークアンドミュージアム」の整備案について、事業選定に至った経緯や事業内容などを説明。多額の事業費を投じる計画に参加者からは反対意見が相次いだ。市は今月23日にも敷島地区で地元説明会を開き、出た意見を市議会に報告。今後の事業の方向性を決めていく。

 「施設の建設や20年間の維持管理、周辺道路整備などにかかる費用は総額42億6800万円」。市が提示した事業費に会場がざわついた。年額にして2億1300万円の負担。これに対し入場料やグッズ販売などによる年間収入は、3万3600人の来場があったと仮定して約4000万円と想定。国や県からの補助を活用しなかった場合、年間約1億7000万円が市の持ち出しとなるとした。

 ただこの試算は来場者数などを厳しく見積もった場合であり、市はできる限り補助金を活用するとともに、来場者数についても年10万人を目指すとした。だが県がセンターを管理していたときの維持費が年9000万円~1億円だったとの説明があると、参加者からは「(現状のまま)市民の憩いの場として使ってほしい」との意見が大半を占めた。会場には市議会で同計画案の見直しを求めていた横山洋介議員の姿もあった。

 この事業は民間と共同で進めるPFIの手法を導入する。建設だけでなく一定期間の施設の維持・管理についても民間事業者と契約を結ぶことになるため、事業費はその経費を含む金額で算出する。このため一般的な施設整備との違いが参加者には分かりにくかったようだ。参加者からは「結局整備費はいくらなのか」といった疑問の声があがっていた。

 市幹部は本紙取材に、事業手法にもよるが今のところの大まかな計画で算出した整備費は、美術館・公園合わせて14億円程度になるとした。同様に跡地活用を検討していた笛吹市の「みんなの広場」(旧NTT用地)の例では、屋外イベントスペースを備えた防災公園として整備するのに8億7000万円程度と試算。維持費や周辺道路の整備費は別計上のため跡地整備の事業費には含まれない。

 この日は事業選定に至るまでに実施した民間意向調査の結果も明らかになった。意見聴取したのはPFI事業の参加実績が豊富な商業系企業4社と美術館運営企業5社、造園系企業3社。それぞれ事業参画への関心や事業の収益性・集客力、事業手法、独立採算の可能性について答えた。

 いずれの企業も事業への関心を示した。収益性・集客力については「公園側で利益を生み出す事業」「人気のある花を植えるなどにより一定の集客を確保可能」「体験や学習要素を」「年数回の企画展が必要」「リピーターを獲得する工夫が必要」「旅行会社とのタイアップは可能」との意見があった。事業手法についてはPFIが望ましいとするほか市が指定管理料を支払う場合、手法は問わないとする意見もあった。整備・運営については、リスクを軽減するため、どの企業も「市の関与が必要」と答えた。

 この聴取では定期借地権事業など比較的民間のリスクが高い手法を仮定したため、慎重な意見が目立った。これを踏まえ市は事業化の段階になった場合、民間が参加しやすい条件を整える考えだ。

 市は県からの同跡地活用の申し出をいったんは突っぱねた。県が「負の遺産」と判断した土地で市がこのまま使っても同じ結果になると予想したからだ。そのまま維持するのであれば毎年1億円近くかかっても「市民の憩いの場」と収益性を問われることはない。だが引き取ると決まった以上将来を見据えた前向きな活用を、と計画を立案。市は施設単体の収益性だけにとらわれず、市のシンボルとして、また広域的な観光ルートの一つとして、交流人口増や街の活性化につなげようと考えている。

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