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長野県,(社)長野県建設業協会

失格基準引上げは国改正が前提/下請要件付きは改善検討へ/地域を支える建設業会議

2018/11/28 長野建設新聞

 地域を支える建設業検討会議の本年度第2回全体会議が21日に長野市の長建ビルで開かれた。県建設業協会は県に対する要望事項として「失格基準価格の引き上げ」「下請要件付き入札における開札前の下請け企業決定の改善」「工事量の確保とさらなる発注時期平準化」などを提示。県は失格基準価格について「中央公契連モデルが改正された際には検討に入りたい」との考えを示し、下請要件付き入札に関しては「改善に向けて検討を開始する」と応じた。

 会議には県から建設部の臼田敦建設技監や藤本済技術管理室長など、協会から木下修会長をはじめ副会長、委員長、部会長などが出席した。

 協会は失格基準価格引き上げの根拠として、県の平均落札率が隣接8県の平均に比べ1ポイント以上低いことや、2017年度決算の売上高営業利益率(東日本建設業保証調べ)が東日本管内23都県中22番目に低い水準であることを挙げ、「品確法に明記された『適正な利潤』を確保するためにも、失格基準価格を95%程度まで引き上げる必要がある」と要望。さらに、「総合評価落札方式では全体の約2割が応札数5者未満であり、この場合、低入札価格調査基準価格は予定価格の90%、失格基準価格は87.5%となる。結果として平均落札率を下げることにつながっている」と指摘し、「価格だけによらないという総合評価の趣旨に反するのでは」と改善を求めた。

 これに対し県は「低入札価格調査基準価格および失格基準価格は国の中央公契連モデルを参考にしながら設定している。この基準が改正された際には検討に入りたい」との考えを示した。

 また、県は本年度から実施している「建設工事における低入札価格調査」の実施状況を報告。9月末時点で公告した768件のうち6.5%に当たる50件で調査が行われ、このうち46件は落札候補者がそのまま落札決定していることを伝えた。調査実施案件の落札総額は約23億円で、平均落札率は92.3%となっている。

 協会側は「国に比べ調査が緩いため、調査を恐れずに低価格で入札するという状況があるのではないか。ダンピングを誘発することのない制度の検討を」と要望。県は「国のような調査は労力や調査コストといった問題もある。現在の調査を1年間行い、ダンピング対策のさらなる強化が必要ということであれば、調査の方法も含め今後検討していきたい」と回答した。

 下請要件付きの入札に関しては、協会が「現行は契約前に下請企業を決めなければならない。受注が不確定の状況で、入札全者が下請企業へ見積もりを依頼することは、入札者だけでなく下請企業にも負担となっている。また、現場条件により着工が遅れ、下請企業から断られるケースもある」と問題点を指摘。県外大手ゼネコンが参入する工事以外では、国同様に落札者の決定後に施工体制を確認する形に改めるよう求めた。

 これに対し県は「今後実態を把握するとともに、改善に向けて検討を開始したい。検討に当たっては本会議の分科会で審議していければ」と応じた。


■交通誘導員問題 本年度も協議会設置へ

 また協会は、交通誘導員が不足し、設計単価と市場価格の乖離も依然として存在することを伝え、改善を要望。これに対し県は、昨年度同様に交通誘導員対策協議会を設置し、警備業者や警察当局等とも連携し、需給状況の認識共有や対策の検討を行う考えを示した。

 協会はこのほか「舗装工事のくじ引き対策」「小規模補修工事の限度額引き上げ」「週休2日制の適正な工期設定とさらなる経費率の見直し」などを求めた。

 臼田建設技監は「災害復旧や防災・減災対策を加速するため、9月補正では27億円余の災害復旧費と、補正規模としては過去10年間で最大となる41億円余の県単独公共事業費を追加計上した。さらに11月補正では災害対応で15億円余を要求するとともに、平準化に資するゼロ県債として26億円余の公共事業費も要求する」と予算確保に努めていることを強調。

 木下会長は、県の補正対応について「防災・減災対策に取り組む知事はじめ担当部局の強い決意の表れ」と評価した上で、「県内建設業の景況感は悪い。とりわけ市町村工事を主体とする直営施工型の企業が受注不振にあえいでる。1件当たりの工事は利益が出るようになってきたが、全体のパイ(予算)は変わっていないため、数が少なくなっている。県にはぜひともパイを大きくし、景気の拡大を図ってほしい」と、さらなる予算確保を求めた。

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