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日本原子力発電(株)

19年度から原子炉領域着手/東海発電所の廃止措置(解体撤去)

2019/01/16 日本工業経済新聞(茨城版)

 日本原子力発電㈱は東海発電所(東海村大字白方)の発電用原子炉施設の廃止措置実施方針を公開した。東海発電所は既に廃止措置(解体撤去)を進めており、現在は熱交換器等解体撤去のうち建屋等の解体撤去工事を行っている。工程によると2019年度からは原子炉領域の解体撤去に着手する。廃止措置は25年度までの予定。廃止措置費用(見積相当額)は施設解体費約347億円、解体廃棄物処理処分費約538億円の合計約885億円。


 廃止措置実施方針は「核燃料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」に基づき、運営している全ての原子炉施設について作成し、公開が義務付けられている。

 東海発電所(電気出力16万6000KW)は天然ウラン・黒鉛減速・炭酸ガス冷却式原子炉で、1965年に試運転を開始。約33年間運転を行い、98年に最終停止した。その後、全ての燃料を搬出し、01年度から解体工事に着手。06年度には廃止措置計画の認可を得た。

 廃止措置計画によると、対象施設は原子炉本体、熱交換器、附属施設、タービン、屋外開閉所など。東海第二発電所との共用施設、汚染のない建屋地下部や建屋基礎は除く。

 原子炉領域は放射能を減衰させるために安全貯蔵を行っている。解体撤去工事で終了しているのは①原子炉建屋内の機器(燃料取替機、非常用予備発電装置、給水ポンプ、補助ボイラーなど)②使用済燃料冷却池建屋内の機器(スキップ、スプリッタ取外機など)③タービン建屋内の機器(蒸気タービン、発電機、復水器、復水ポンプ、炭酸ガス貯蔵タンク、炭酸ガス気化器、蓄電池など)④屋外機器(ステーション変圧器、ユニット所内変圧器、屋外開閉所、冷却水ポンプ、前処理装置、中和タンク、冷却水スクリーン室)―など。

 現在の解体撤去は原子炉建屋内の機器で破損燃料検出装置、非常用炭酸ガス貯蔵タンク、原子炉補機冷却水機器などで行っている。これまでの解体撤去工事で施設内外に放射性物質の汚染を生じるような事故は無く、安全確実に解体を進めている。

 原子炉運転中に発生した放射性固体廃棄物や、実施済みの解体工事で発生した核燃料物質によって汚染させた固体状物質は、ドラム貯蔵庫や固体廃棄物貯蔵庫などに保管している。放射性固体廃棄物の保管量は合計約5900t。

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 廃止措置対象施設の解体方法などは次のとおり。

 【放射能レベルの比較的高い原子炉領域(安全貯蔵対象)の設備・機器の解体】

 放射能レベルが比較的高い部分は原子炉領域に限定されている。原子炉領域は放射能を減衰させるために原子炉本体に接続されている系統の全ての弁等を閉止し、原子炉領域解体撤去開始まで安全貯蔵を行う。

 安全貯蔵期間終了後は、原子炉領域にある設備・機器を熱的切断装置または機械的切断装置で切断などを実施し、取り出す。手順は炉内挿入物(制御棒、緊急停止装置など)の撤去を行った後、原子炉本体および生体遮へい体の解体撤去など比較的大規模な解体撤去工事を行う。

 工事に当たっては、放射線業務従事者の被ばく低減のために遠隔操作装置およびサンプル採取装置などを導入するとともに、適切な処理・搬出のために解体撤去物等搬出装置などを導入する。工事に伴う放射性物質の放出を抑制するため高性能粒子フィルタの装置、局所フィルタ、局所排風機の導入などを行う。

 【放射能レベルの比較的低い設備・機器(安全貯蔵対象外)の解体】

 原子炉領域の安全貯蔵期間中に、原子炉領域解体撤去で発生する解体撤去物の搬出ルートの確保、資機材置場の確保、熱的切断装置または機械的切断装置で切断、ブレーカなどで破砕を実施し、解体撤去を行う。原子炉領域安全貯蔵期間中には熱交換器解体撤去など比較的中期模な解体撤去工事を行う。原子炉領域安全貯蔵期間の終了後は、作業量の平準化を考慮して残りの設備・機器を前述と同様の方法で順次、解体撤去を実施する。

 工事に伴う放射性物質の放出を抑制するため、汚染拡大防止囲いの設置、局所フィルタおよび局所排水機の導入などを行う。

 【建家および構築物の解体】

 汚染設備の撤去後、建家に残っている汚染をはつり装置によるはつり等の方法で除去する。施設内の汚染を除去後、汚染状況を確認した上で全ての管理区域を解除する。汚染の無い建屋も含めて廃止措置対象施設全てで大型ブレーカなどの重機を用いて解体撤去する。



【図=廃止措置工程】

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