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小山市、第2調節池2期計画を策定、エコミュージアム、5年間の目標明示

2019/09/25 日本工業経済新聞(栃木版)

 小山市は、渡良瀬遊水地第2調節池エコミュージアム基本計画第2期計画策定(下生井)に着手した。第1期計画策定から5年が経過したため、後期5カ年間の第2期計画を策定する。昨年度に策定した「渡良瀬遊水地観光地化推進5カ年計画」(2018~22年度)との整合性を図る。

 渡良瀬遊水地第2調節池は、国土交通省が湿地保全・再生基本計画に基づく掘削整備を実施中。「浅い池」と「深い池」をつなぐ水辺の湿地環境を創出し、自然観察や自然体験の場を提供する「エコミュージアム化」を目指している。観光振興や地域活性化につなげる。

 計画策定業務はアジア航測(東京都新宿区)が担当し、来年3月末までが履行期間。第2調節池の掘削状況の進展、関連計画との連携、周辺地域の旧思川水辺公園との関係性、社会状況の変化に対応。今年度に工事発注を予定しているトイレの実施設計を含む。

 第2期計画には、関係者で組織する推進懇話会(2回開催予定)の意見を反映する。懇話会に提示する検討資料作成の補助、検討結果を取りまとめた報告書、基本計画、河川占用許可申請書、市との打ち合わせ(計4回)資料の作成を担う。

 渡良瀬遊水地観光地化推進5カ年計画では主要事業に新アクセス道路整備調査、サイクリングロード整備、駐車場や駐輪場の拡張、サイン整備、エコミュージアム整備、旧思川水辺公園整備、小口一郎記念館整備、体験交流施設拠点整備を盛り込んだ。

 地域の特性と魅力を磨き上げ、遊水地利活用による持続可能な地域づくりを推し進めていく。20年度は東京五輪・パラリンピック、21年度はプレとちぎ国体、22年度はとちぎ国体本番を迎える。こうした一大イベントを好機ととらえた。

 ネットワーク形成では、新アクセス道路整備調査に着手する。県道萩島白鳥線と県道南小林松原線との交差点から遊水地に連絡する道路の整備を検討。併せて市道の拡幅や与良川の旧堤を利用し、遊水地周囲堤にある生井桜づつみ周辺への連絡道路を築造する。

 サイクリングロードの整備では「安全で快適なサイクリングネットワーク構築」のため、遊水地へ向かう道路に分かりやすい案内看板を設置する。課題となっている思川サイクリングロードの未舗装個所は、県へ舗装整備を要望していく。

 付近一帯の駐車場収容能力は計230台程度にとどまり、大きなイベント時には駐車場が不足気味。駐車場は国へ要望している旧思川~松原大橋野木町境間の堤防拡幅により、駐車台数を確保。駐輪場は生井桜づつみ公園内にサイクルラックを設置する。

 サイン整備は第2調整池へアクセスする上で特に重要となる場所を検討しながら間々田駅、野木駅からレンタカーで来る人、市外から来る人が分かりやすいルート案内板を整備する。第2調節池内や周辺施設の案内表示は、整備進捗状況に応じ適切な時期に設置する。

 旧思川水辺公園整備は、第2調節池に隣接した生井地区6haの水辺空間を生かす。水辺周遊園路に藤棚とともに両岸水辺にハナショウブ、園路沿いにスイセンやアジサイ、法面にヒガンバナを植栽。水辺には乗船体験ができるよう船着場を整備する。

 学習環境の充実では、小口一郎記念館整備事業を立案する。遊水地の歴史に関する理解を深め、郷土出身の版画家・小口一郎の芸術作品に触れ合える環境を整備する。小口一郎研究会が所蔵する作品の保存状態を調査。計画期間内に整備場所の選定や整備内容を検討する。

 遊水地は東京から60㎞圏の立地利便性を有し、絶滅危惧種183種を含む自然の宝庫。環境学習に適し、利根川の治水機能の要。「来る」「見る・体験する(学ぶ・つくる)」「食べる・泊まる」「買う」「交流する・PR」の5つの視点から施策を展開していく。

 キャッチフレーズは「ひと みず みどり だいち そらをつなぐ~守り親しむ渡良瀬遊水地エコ・アグリツーリズム~」に設定。基本ターゲットを「都会の親子連れ」「教育旅行」「ナチュラリストの大人たち」(子育て前、子育て後世代)、「外国人観光客」に絞り込んだ。

 渡良瀬遊水地は12年7月3日、ラムサール条約湿地に登録された。市は①治水機能確保を最優先したエコミュージアム化②環境にやさしい農業を中心とした地場産業の推進③コウノトリ・トキの野生復帰-の「賢明な活用の3本柱」を推進している。

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