記事

事業者
栃木県佐野市

佐野市国土強靭化計画案、出流原PA周辺に物流拠点、北関道沿線に首都圏企業を移転

2020/07/04 日本工業経済新聞(栃木版)

 広域的交通の要衝と首都圏に近接する優位性を併せ持つ佐野市は、首都圏のバックアップ機能を果たす災害時の総合物流防災拠点都市を目指していく。東京圏企業の工場や事業所、本社機能の移転誘致を佐野インランドポートや出流原PAスマートIC周辺へ促進。大規模災害時でも首都圏企業の事業継続を担保できるよう物流のサプライチェーンを完備する。国土強靭化地域計画案に盛り込み、優先的に取り組む施策に位置付けた。

 計画期間は2020~29年度の10年間。基本理念は「協働で築く安全安心な未来 災害に強いまちづくり」に据え、国や県全体の強靭化に貢献。県や周辺市町と相互応援体制を構築し、民間事業者との連携を強化。首都圏避難者受け入れと諸機能を代替する。

 交通網は北関東を横断する国道50号が市街地南端に沿って東西に延び、東端をかすめて南北に走る東北自動車道佐野藤岡ICに連結。北関東自動車道は市中央部を貫き、東北道岩舟JCTに接続。国道293号は南部市街地から市中央部を突き抜けていく。

 東北道佐野藤岡ICに加え、10年4月に北関東道佐野田沼IC、11年4月に東北道佐野SAスマートICが開通し、今後は北関東道出流原PAにスマートICが設置予定。佐野新都市バスターミナルは高速バスのハブ機能を有し、大都市圏に乗り入れている。

 鉄道網は東西軸のJR両毛線が小山~高崎駅に連結。小山駅からは東北新幹線や宇都宮線、高崎駅からは上越新館や高崎線で容易に東京駅にアクセス。東武線は葛生駅~田沼駅~佐野駅~館林駅経由で浅草駅に向かう。東京から70㎞圏内に位置し、利便性が高い。

 市の産業構造はプラスチック製品製造業や食品製造業が中心。佐野工業団地、羽田工業団地、田沼工業団地、佐野インター産業団地、佐野みかも台産業団地、佐野田沼インター産業団地、佐野AWS産業団地の7カ所を拠点に産業活動が活発化。

 17年に開設した佐野インランドポートを核に、総合物流拠点を創出。集配拠点、燃料供給備蓄基地、代替港湾となる搬出入機能を整える。市内産業団地は完売し、産業用地が不足。高速道路や幹線道路への接続性の高いエリアに産業用地を造成し、需要に応える。

 国道50号や国道293号の道路網が充実し、北関東道IC開発に伴う高速道へのアクセス性の良さから周辺への産業基盤整備の一層の向上が期待されている。一方、国は今後30年以内にマグニチュード7クラスの首都直下型地震の発生確率を70%と予測。

 首都機能に甚大な被害を及ぼす災害が発生した場合、リスク分散重視による企業立地を推し進める。エネルギー供給の停止やサプライチェーンの寸断、用水供給途絶に伴う社会経済活動への打撃を回避。経済が機能不全に陥らないよう地域防災力を強化する。

 佐野インランドポートは京浜港のバッグヤード機能を果たせるよう施設の拡張を検討。出流原PAスマートICは22年度中の供用開始を目指し、周辺では計画的な産業団地の整備を進める。産業に関する重要業績指数(KPI)を掲げ、目標値を設定した。

 市外本社の企業届け出件数は18年度が77件だったのに対し、21年度は110件が目標。出流原PA周辺開発事業の進捗率は18年度の第1段階5%を21年度には50%に引き上げる。出流原PAスマートICは18年度の9%を21年度は100%とする。

 19年10月の東日本台風では、経験したことがない大被害が発生。災害時に市民の生命や財産を守り、最悪のリスクを回避する災害に強いまちづくりの推進が不可欠。強靭化による信頼性の向上、投資の呼び込み、地域活性化に連動した施策を展開していく。

紙媒体での情報収集をご希望の方は
建設新聞を御覧ください。

建設新聞はこちら