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宇都宮市、総合治水雨水対策計画、田川 床上浸水5年で解消へ、姿川は10年後に床下も

2021/04/27 日本工業経済新聞(栃木版)

 宇都宮市は、総合治水・雨水対策推進計画素案を公表した。計画期間は2021~30年度。田んぼダムなど流域全体の官民協働の取り組みに県の田川、姿川河川整備が加わり、基本方針に掲げていた対策期間を大幅に短縮する。19年東日本台風と同規模の降雨に対し、田川流域の市街地は5年後に床上浸水を解消。姿川流域は10年後に床上・床下浸水を解消する中期目標を設定。市管理河川流域は10年後に5年確率の短時間降雨に対して床上浸水(70・1ha)を解消する。

 シミュレーションでは計画推進によって東日本台風と同規模の豪雨で約150haが浸水した田川の市街地は5年後に浸水面積が26・9haまで減少し、29・2haの床上浸水は解消。22・3haが浸水した姿川上流流域は10年後、浸水面積0haを目指す。

 市は20年2月に「流す」「貯める」「備える」取り組みを進める総合治水・雨水対策基本方針を策定。出水期までに効果を発揮する田んぼダムや公共施設への貯留・雨水施設の設置を先行事業で実施。田川、姿川については30年後の目標で東日本台風と同規模の降雨(213・6㎜/6時間)に対し、床上浸水解消を図るとしていた。

 県は田川の市街地区間(約6500m)と姿川の大谷工区(約3800m)で調節池の設置を含む河川改修に着手。改良復旧の田川では今年度から浸水対策重点地域緊急事業の採択が決まり、25年度までに集中的な対策が実施される。

 県の事業計画は、田川は川田地区の下流調節池や山田川合流点付近の上流調節池の設置、両調節池間の河道掘削。姿川は主要地方道宇都宮今市線の大谷橋(大谷町)から上流で築堤や掘削、護岸工などを実施し、豆田川合流点付近に調節池を設置する予定。

 県の河川改修を中心に、市では田んぼダムなど官民協働の「貯める」取り組みを連携して進めることから田川、姿川の目標期間を大幅に短縮した。

 市管理河川流域は10年後の中期目標で降雨量47・2㎜/時(5年確率の短時間降雨)に対し、床上浸水を解消。30年後の長期目標ではこれまで最大の局所的短時間降雨83㎜/時に対し、市民生活に大きな影響を及ぼすレベルの床上浸水の解消を目指す。1000年に1回想定される最大規模の降雨に対しては自助、共助、公助を組み合わせた総合的な対策で人的被害を防止する。

 「流す」取り組みでは、国や県管理河川に流下する都市基盤河川や準用河川、下水道雨水幹線の整備に加え、河川の浚渫や水門などの施設の更新修繕を引き続き実施。市管理河川流域では30年後に河川整備を完了させる目標も掲げた。

 「貯める」取り組みは市が雨水の溜まりやすい場所などで公共施設の貯留・浸透施設を整備。田んぼダム排水調整桝、市街化区域の民有地や市街化調整区域の小規模開発における貯留・浸透施設の設置支援・促進などに取り組んでいく。

 具体的な市の「流す」取り組みは治水対策で奈坪川、新川、越戸川、西川田川、鶴田川、駒生川、鎧川、大久保谷地川の河川整備を推進。10年後の河川整備率を70%(現在62・4%)とし、重点排水区の雨水幹線整備率は63%(56・3%)とする。

 「貯める」取り組みは田んぼダムや貯留・浸透施設の設置、道路透水性舗装、雨水浸透桝の設置、既存調整池の活用などで田川、姿川流域の10年後の貯留量を225万立方m(現在33万立方m)、市管理河川の貯留量を14万立方mとし、合計239万立方mの貯留量を確保する。

 「備える」取り組みでは水害リスク地域の開発抑制、都市機能誘導支援策における浸水対策の要件化、農業用水路、ため池の点検と補強、再開発事業などの浸水対策を評価した容積率緩和などを実施。また、農業用ため池監視体制、水位計や観測カメラによる河川監視の強化、雨水幹線のマンホール水位計導入検討などを進める。

 市では田川と姿川の対策期間短縮を受け、基本方針に掲げていた市管理河川を含む市全域で観測史上最大の短時間降雨に対する床上浸水解消という30年後の長期目標の前倒しを検討していく。

 計画素案は26日からパブリックコメントを開始。5月下旬に計画決定する予定。

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