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県企業局 5カ年で15億投入、深山発電所改修 近く公告、除塵機、排砂バルブ設計へ

2021/05/07 日本工業経済新聞(栃木版)

 県企業局は、深山発電所全面改修事業(那須塩原市板室897-15)に乗り出す。近く水力設備実施設計を指名通知するとともに、主要機器製作据え付け工事の総合評価落札方式条件付き一般競争入札を公告する。水力設備実施設計は21~22年度の2カ年継続費1936万円を設定。改修は21~23年度が設計・製作、23~25年度が現地工事。改修工事は21~25年度の5カ年間の継続費15億1008万円を組んだ。施工期間中は運転を全面停止し、25年6月の運転再開を目指す。

 全面改修するのは発電専用施設部分。国の再生可能エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)適用に向け、既存導水路の土木施設を再利用するリプレースを導入。FITの毎時1kwの売電価格はリプレースが15円で、20年間固定される。

 土木施設の取水路(延長21m)、取水堰(コンクリート重力式、堤高5・5m、堤長23m、堤体積850立方m)、沈砂池(延長26m)、導水路(延長1215m)、上水槽、水圧鉄管は改修の対象外。費用対効果検証の結果、土木施設と発電施設のフル改修を見送った。

 売電価格が有利なフル改修は毎時1kwの売電価格が27円。現行の毎時1kwの売電価格は9円76銭。17年度に設備改修検討をニュージェック(大阪市)、20年度は主要機器実施設計を北電技術コンサルタント(富山市)に委託した。

 継続費年割額は水力設備実施設計が21~22年度が各968万円。改修工事は21年度3300万円、22年度9680万円、23年度8億520万円、24年度4億2218万円、25年度1億5200万円。債務負担行為の主要機器撤去工事は2億4002万円。

 22~25年度の現行の主要機器撤去工事は主要機器製作据え付け工事に内包する。更新工事は水車や発電機、配電盤開閉装置、諸機械装置更新各一式。機械器具設置は現行の発電所建屋の規模に合わせた完全オーダーメードになるため、設計・製作に3年を要す。

 水力設備実施設計は、発電所手前に設置する除塵機と排砂バルブの設計。発電所に流木や落ち葉、各種ごみが流入すると内部の機械器具に不具合が発生。手前のスクリーンで各種ごみを食い止め、発電所の健全性を保つ。

 22年度第1四半期には堰堤線設備更新工事を発注。工種は電気設備。22年度第2四半期に除塵機等更新工事を発注。機械器具設置工種となり、排砂バルブ更新が含まれる。

 22年度第3~4四半期にかけ、水路テレコン等更新工事を発注。電気通信工種で、場内監視カメラ設置を含む。24年度第1四半期は水圧鉄管塗装工事を発注。水圧鉄管の表面塗装が劣化しており、再塗装で長寿命化する。

 深山発電所は1987年10月に着工し、84年4月から運転を開始。1級河川那珂川水系最上流の流水を利用した自流式水路発電所。深山ダム上流の取水堰から最大で毎秒2立方mを取水し、導水路、上水槽、高低差148mの水圧管を経て発電機を運転する。

 水路式発電所は長い水路の落差を利用した発電方式。水車に流れ込む水量が多く、落差が高いほど多くの発電が可能。県営発電所12カ所のうち深山をはじめ風見(塩谷町)、木の俣(那須塩原市)、大下沢、小百川(以上日光市)の5カ所が水路式を採用する。

 深山発電所の年間発電量は約2800世帯の電力消費量に相当する1000万kwh。横軸単輪二射ペルトン型水車の最大出力は2300kw。雪解け水の多い春先や降水量の多い秋口の発電量が多く、那珂川からの取水量によって発電量は変化する。

 これまで部分的な改修実績はなく、全てが運転開始当初の設備機器を使用している。目立った不具合はなく健全運転されているため、改修の必要性が生じなかった。しかし運転開始から40年近くが経過し、設備機器の更新時期を迎えている。

 FIT認定後は2年以内に発電所の運転停止が義務付けられ、停止前に主要機器工場製作を発注。工事期間を考慮し、速やかな再稼働準備を整える。電力会社は買い取る費用の一部を電気利用者からの賦課金で集め、再生可能エネルギーの導入を後押しする。

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