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栃木県農地整備課

防災重点ため池218カ所、県農地整備課 工事推進計画を策定、来年度までに劣化、耐性調査

2021/06/09 日本工業経済新聞(栃木版)

 県農地整備課は、防災重点農業用ため池の防災工事等推進計画を公表した。対象は218カ所。2022年度までに劣化状況評価209カ所、地震・豪雨耐性評価214カ所での実施を位置付けた。劣化状況、地震・豪雨耐性評価は市町が、防災工事は市町や土地改良区などが実施主体。工事時期は評価結果を踏まえて設定する。管理者は年2回以上定期点検を行い、水位計や監視カメラ設置を推進するなど管理体制を強化する。(2~3面にため池一覧)

 県内の農業用ため池は520カ所。決壊した場合の浸水区域に家屋や公共施設などがあるものについては防災重点ため池として県が1月に指定した。多くは明治時代以前の造成で老朽化し、近代的な技術基準を満たしていない。

 防災重点ため池の指定や防災工事等推進計画の策定は昨年10月に施行された特別措置法に基づく。決壊による水害から県民を守るため、推進計画に劣化状況評価や地震・豪雨耐性評価、防災工事の推進や関連する事項について定め、必要な防災工事を今後10年間で集中的に実施する。

 防災重点ため池の市町別箇所数は足利市55、益子町26、栃木市25、那須烏山市24、那珂川町17、宇都宮市16、佐野市12、矢板市8、さくら市8、市貝町5、大田原市4、那須塩原市4、那須町3、芳賀町3、真岡市2、茂木町2、日光市、小山市、塩谷町、高根沢町が各1。

 管理者別の内訳は国・地方公共団体が35、土地改良区が40、水利組合が78、集落または個人が59、その他5、不明1。県は市町や管理者に対して県土地改良事業団体連合会と連携し、必要な対策への技術的な支援を行う。

 ICTなど先進技術を活用した水位計や監視カメラの設置は全ての防災重点ため池を対象に推進。防災工事の完了までに時間がかかる場合は応急的な防災工事や管理・監視体制を強化するなど必要な対策を講じる。

 防災工事の実施にあたっては文化財保護法の指定区域にある場合、保護担当部局との協議調整、土地改良事業設計指針を参考にした環境への配慮を要請する。実施主体は管理者。大規模な防災工事では県が実施主体となる可能性がある。

 廃止工事は未利用池など管理状況や決壊した場合の影響度、地域の実情などを踏まえて推進。環境担当部局と協議し、絶滅危惧種の移動など必要な措置を行うことを求める。

 218カ所のうち、これまでに評価を実施したのは成果を活用。利用見込みのない池は評価を実施しない。日光市の大室ダム、茂木町の森作池の2カ所は評価の結果、防災工事は不要とされ、大室ダムは管理者の市が経過を観察する。

 5月末現在、劣化状況評価や地震・豪雨耐性評価が完了していない池は186カ所。防災工事は県が那須町の江戸川温水ため池で実施中。廃止工事は宇都宮市が茗荷沢ダム(下)で実施する。

 県内の防災重点ため池の所有者は国・地方公共団体が104、土地改良区が5、集落または個人が10、その他が5。不明が94カ所存在している。

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