コラム

2002/10/04

新聞の切り抜き

2002.10.04 【新聞の切り抜き】

▼プロ野球に限らず、高校野球関係者の中にも、熱球を追う選手たちの陰に、彼らと同様に、あるいは彼ら以上に、野球を愛する人たちがいる。マネージャー、審判員、公式記録員、グランドキーパーたち。そんな高校野球を支える人たちの紹介が、今年も「全国高校野球選手権地方(埼玉)大会」の小冊子『真夏の球宴』に掲載された

▼県立川越初雁高校業務主任で審判暦20年の伊藤誠(63歳)さん。自衛隊時代に草野球の経験しかなかったが、所沢東高校勤務の時に「声が大きいので審判をやりませんか」と元高野連会長の河野伸夫先生に勧められ審判に。時には年間150試合をこなすことも。野球を通じて多くの人に出会う喜び、審判員として最終ゲームを終えたときの感激が、次の1年の頑張りにつながると記している

▼実は伊藤さん、福岡市能古島出身。昭和31年、17歳の春。家の玄関先にインコが飛来し捕捉した。島から半里離れた刑務所の死刑囚が飼っていたインコだった。刑務所に届けに行き、死刑囚(31歳)から「僕のインコだが、預かってくれないか」と言われ、1冊の聖書とともに手渡された。この模様は地元紙に報道された。20歳で上京後、苦しいとき当時の新聞の切り抜きを見ては「あの人はもう処刑されたのであろうか。それを思えば自分はどんなに幸せなことか」と奮起したという。出会いの3か月後、死刑執行が停止されていたことなど、当時の伊藤少年には知るよしもなかった

▼そして、27年後の昭和58年、23歳で逮捕(死刑囚)されて以来、34年ぶりに自由の身になった生還者(57歳)が、伊藤さんに獄中の思い出としてインコの話しをした。元死刑囚の名は、日本裁判史上、初めての死刑判決再審無罪を勝ち取り、濡れ衣を着せられ冤罪(無実の罪)となった『免田事件』の免田栄(現在77歳)さん、その人である。

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