コラム

2002/11/02

レトロ調への回帰

2002.11.02 【レトロ調への回帰】

▼最近、「古さ」への憧れが急速に町づくりの至る所で見られる。派手で身の丈に合わない豪華な施設を求めた時代から、昔ながらの素朴で町並に適したものを求めているようだ

▼横浜税関の改修現場を見た。外観を残し、あまり道路から見えない後ろの部分を解体し増築することで当時のレトロ調の建物を保存するという。栃木県では県庁舎の改築か保存かが県知事選での争点の1つになったり、愛知県の県立高校では旧制中学からの校舎を改築せず保全することが県議会まで巻き込んだ騒動になっている。近年、古い施設や町並みの保存は重要な観光資源の一つになっている

▼毎週日曜日の夜に「世界遺産」という番組がTV放送されている。先日はベルギーのブルージュを特集していた。700から800年前は欧州で最も栄えた港町の1つだったが、河口と運河が砂に埋もれ、港の機能が損失してしまい町自体がさびれてしまった。しかし、そのことが当時の倉庫や商家をそっくり保存し、町中の運河沿いのメルヘンチックでロマンチックな町並みが人気を呼んでいる

▼高度成長期に日本は機能性のみを優先したコンクリート剥き出しの建物をこぞって建設した。日々の業務でストレスを抱えた現代人にとって、ホッとする心のよりどころとなる古き趣のある施設や町並みこそ開放的なリフレッシュの場となる

▼「古き良きもの」の保全・追求は、ビルの谷間を吹き抜ける冷たい逆風にさらされている社会人にとって、安息の場となるに違いない。コンクリートジャングルに癒しが求めれている。今後の町づくりの大きなヒントになると考えている。

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