コラム

2002/11/08

苦情と「腹立てずの会」

2002.11.08 【苦情と「腹立てずの会」】

▼戦国時代の主従関係は、のちの江戸時代における藩主と家臣のような強固な縦の関係とは違い、密接な横のつながりだった。そもそも大多数の戦国大名は国人領主から身を起こしており、それまで同列だった者のうちから、頭一つリードした者が他を支配する体制になっていったからである

▼戦国大名は絶対者には違いないが、常に家臣との協調の上に成り立つ権力であり、戦場において苦楽をともにしている連帯感から、主君は家臣を非常に大事にする傾向があった。家臣のために自ら風呂を沸かしたと伝えられる蒲生氏郷などはその筆頭に数えられるだろう

▼黒田長政は若い頃から家臣の話によく耳を傾けていた。彼は城内で定期的に会議を開き、政治のことなどで意見を交わしていたという。重臣はもとより身分の低い家臣でも正直な者や有能な者は積極的に参加させ長政と対話したと伝えられる。出席者は?互いに何を言われても腹を立てない?後々にうらみを残さない?その場の話題を外部の者に話さない−の3点が誓約され会が進められた。「腹立てずの会」と呼ばれたこの会議は領国経営に大いに役立ったとされる

▼日本工業規格(JIS)の「苦情対応マネジメントシステムの指針」によると、苦情の対拠法は「まず相手の言い分をすべて聞くこと」が基本だ。実はこれが難しいという。どうしても途中で反論したくなるからだ。「苦情を言ってきた人の悪口を第三者に話さない」のも鉄則だ

▼苦情を言われるのは嫌なものだが、自分も少なからず迷惑をかけていることを念頭に置けば、苦情は商品やサービスの改善につながる重要な情報源となる。

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