コラム

2002/11/29

「耳」についてあれこれ(立・JI)

2002.11.29 【「耳」についてあれこれ】

▼沖縄の「ミミガー」は豚の耳の料理である。頭から耳をそぎ落とし、炒めたり煮たりして軟骨も含めて食べる。食感はコリコリとしている。これとは別に、食材ではないものの自分の耳をそぎ落としたのは画家ゴッホである

▼彼の耳切り事件は有名で、耳に包帯をあてた自画像も良く知られている。耳切りとはいえ実際は耳のたぶをそぎおとしたらしく、耳全部を切り落とした訳ではない。原因は、同居人の画家ゴーギャン描くゴッホ像に異常を見いだし突発的に行ったという説、ゴーギャンとの別離によるという説などがある

▼ムンクの「叫び」という絵はうねる空間の中で、耳を押さえ口を大きく開けた人物を描いた絵である。「叫び」という題だが、画中の人物自身は叫んでいない。作品は、戦時中に鎖でつながれた者がいたり自殺が多く起きるノルウェーのある海岸を訪れたムンクが、日没時に死者の「叫び」を感じとり描いたものだ。画中の人物は、彼らの叫びが聞こえないよう耳をふさいでいる

▼人気バスケットボール漫画「スラムダンク」の主人公は器用な耳を持っている。キャプテンから自己中心的なプレイを注意された途端に耳が自動的にパタンと閉じるのである。誉め言葉には大きく開くが、忠告の時は遮断する。主人公の人格から離れ、かつ主人公に似た性格を耳自身がもっている

▼「耳障り」も、本人が不快な音に使う言葉でありながら、耳だけが遊離しているような印象を受ける。耳は耳なりに音に対する欲求があるかのようだ。詩人ジャン・コクトーの耳は感情さえも持っている。「私の耳は貝の殻/海の響きを懐かしむ」(立・JI)

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