コラム

2003/01/16

明るさと繊細さと(本・SY)

2003.01.16 【明るさと繊細さと】

▼昨年末の東京証券取引所の納会で前巨人監督の長嶋茂雄氏が恒例の手打ちをした。関係者以外で同所の年末の手打ち式に臨んだのは初めてという。株価の下落、不良債権問題、デフレ加速など金融システムの不安が増大する中、「明るさ」を前面に押し出す長嶋氏の個性にすがりたい気持ちがあったのだろう

▼同氏の「明るさ」は現役時代は「勝負強さ」となって現われた。天覧試合サヨナラホームラン、首位打者6回獲得、日本シリーズやオールスターゲームでの抜群の成績など枚挙にいとまがない。反面、イージーゴロをファインプレーに見せたり、空振りのとき、ヘルメットが吹っ飛ぶように大き目のものをかぶるなど野球に演劇的要素を持ち込む「繊細さ」も持ち合わせた

▼天性も多分にあるが、長嶋野球は並外れた努力から生まれものだ。そして努力の中から「無心の境地」ができあがる。先日、長嶋氏のライバルでもあり「鉄腕投手」として旧西鉄ライオンズを日本シリーズ優勝に導いた稲尾和久氏の講演を聞く機会があった

▼稲尾氏は語る。「野球は投手と打者の駆け引きが大きな部分を占める。私は打者が何をねらっているかその構えや雰囲気で見抜けた。しかし、長嶋さんは見抜けなかった。見抜けない、というより打席がぽっかり無のようになっているんです。そして吸い込まれるようにど真ん中に投げてしまう」

▼長嶋氏も語る。「打撃のコツは来た球をパーンと打つこと」「インパクトは脇を締めると同時に脇を開ける」「一心に攻めの気持ちで危険球をかわすことも考える」こうなると野球も「巨人の星」の世界であるが。前向きに明るくと言うことだろう。(本・SY)

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