コラム

2003/01/23

「日本経済不作為の罪」(甲・EO)

2003.01.23 【日本経済不作為の罪】

▼表記は、日経編集委員である滝田洋一氏の最近の著作名。バブル崩壊以降、我が国を襲った経済状況と、これに対する政策の詳細を記述している。不作為とは、行為の一種で敢えて積極的な行為をしないこと。あまりの不良債権の大きさに政府、日銀、銀行など、それぞれが国民に真実を覆い隠し、その場主義で当面の目先だけを繕ってきた今の政策の詳細を鮮明に描く

▼株と土地を合わせた国全体の「国富」のピークは、90年末の3550兆円。これがバブル崩壊で1339兆円も減少したという。この減少率は4割、直近の名目GDPの2年半分にも達し、日本経済では過去に例を見ない。太平洋戦争でも国富の減少率は25%だったというから、この減少率がいかに大きなものかが分かろうというもの

▼一方で、我が国の家計の金融資産は1400兆円もあり、これがバブルが崩壊しても金融恐慌が発生せずに済んだ反面、不良債権の抜本処理を遅らせてきた要因ともなった

▼しかし、この1400兆円の金融資産も銀行という「金融仲介業者」に預けているだけに過ぎず、銀行はこの貯金で企業や土地に融資しており、これが大きく目減りしていることを考えると、実際は預金通帳に名目金額の記入があるだけで、実は相当な部分が消えて無くなっている、という実態に愕然とする。もし解約騒ぎが起こればひとたまりもなく銀行は破綻するため、小泉総理は、これを恐れ決済性預金の全額保護を決断した

▼今や、家計も膨大な国富喪失の意味を悟り始めており、不良債権の抜本処理を先送りしているうちに、金融不安が時間とともに再燃、清算の時が迫っているという。(甲・EO)

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