コラム

2003/01/24

引き際の美学考(水・KK)

2003.01.24 【引き際の美学考】

▼?桜の花の散る如く?―日本人好みの引き際の美学である。角界の双葉山、大鵬、千代の富士と、かつての大横綱はわずかでも力の衰えを自覚するや潔く自ら土俵に別れを告げた

▼格闘家にとって現役を退くことは簡単な問題ではない。吉野弘幸選手(35歳)は現役最古参のプロボクサーだ。日本タイトル2階級制覇、東洋王座も獲得、世界挑戦の経験もある。キャリア18年、通算36勝26KO11敗1分。再び頂点を狙うのは難しいが旺盛なファイティングスピリットで今なお後楽園ホールを満員にする。ライセンス発給期限の37歳まで闘い続けるのが彼の目標だ

▼前世界ミニマム級チャンピオン新井田豊選手は2001年8月、22歳の若さと16戦無敗の勢いを駆って一気に王座を攻略。しかし2か月後、王者のまま突然、引退宣言。持病の腰痛悪化が理由だが、頂点に登りつめた達成感からモチベーションの維持が困難になったと関係者は見ている。彼は最近、カムバックに向けトレーニングを再開した

▼「あしたのジョー」と「巨人の星」で構成された漫画雑誌『ジョー&、飛雄馬(講談社)』が若者の間で大人気だ。矢吹丈や星飛雄馬をリアルタイムで知らなくても2人のひたむきな生き方に対する共感は世代を超えた不変のものに違いないと思う

▼「すがすがしい気持ち」「心底納得している」20日行なわれた貴乃花関の引退会見は見る側、聞く側をも十分納得させるものだった。一部に遅きに失した引退時期と指摘する向きもあるが、怪我と闘い、自らの限界に挑戦し続け土俵を去ったヒーローに「夢をありがとう」「第二の人生に幸あれ」と感謝とエールを送りたい。(水・KK)

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