コラム

2003/02/18

クローンの技術について(立・JI)

2003.02.18 【クローンの技術と人間】

▼クローン人間誕生ニュースが社会を賑わせている。クローン人間について議論が噴出しているが、大多数は否定的でクローン技術そのものが葬られそうな状況ともいえる。こうした中、ジャーナリスト粥川準二氏は著書「クローン人間」(光文社新書)で、本当に議論すべきなのは再生医療、治療目的クローンであると述べている

▼クローン技術による再生医療は、機能を失った臓器の細胞を蘇らせることができる。しかし一方にある問題点を粥川氏は指摘する。彼はクローン技術が「人体の資源化」につながる事を危惧している。細胞を培養し治療に利用する技術は莫大な利益をもたらし、遺伝子情報を含むヒト細胞は商業目的で利用され、流通することになる

▼その細胞にどれほどの経済価値があるのか、本書では一例を紹介している。以前、日本ヒト細胞学会の理事長が事業に失敗し、研究用に集めていた日本人の細胞40人分を借金の担保にしたことがあった。専門家が出した評価額は一人あたり400万円だったという

▼公的細胞バンクを運営する国立医薬品食品衛生研究所では、検査などで採取した細胞を収集し研究者に提供している。この細胞には年齢や性別、病歴などの個人情報が添付されている。また輸入した細胞を販売している一般企業もある。肺ガン細胞は約6万円、毛細血管内皮細胞は約10万円だという

▼優生学的な研究が進めば、個人の能力に応じて細胞の値段に差が出る。「優秀」「美形」「健康」等の人の細胞には高値がつくのであろう。価値観は多様だろうが、自分の細胞にいくらの値段が付くのか大いに興味深いものがある。(立・JI)

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