コラム

2003/03/04

「戦いすんで日が暮れて」

2003.03.04 【戦いすんで日が暮れて】

▼日本列島の桜は1月に沖縄でヒガンザクラが開花し、4ヶ月かけ北上5月に北海道でソメイヨシノが満開になる。気象庁は明日5日今年第1回目の桜開花予報を発表する。「サクラサク」は心躍り、この前線ばかりは待ち遠しい

▼浮かれている場合ではないのが、不況下で今月決算を迎える多くの企業である。例年以上のストレスを抱えながら少しでも業績アップへと躍起になっているはず。昭和44年4月に佐藤愛子(大正12年大阪生まれ)著による『戦いすんで日が暮れて』が第61回直木賞を受賞

▼講談社刊単行本の帯には「世の中に、りりしい男はいないのか!男まさりの強い妻の、涙のわけを痛快にえがく」とある。お人好しな夫が経営する会社が倒産。借金取りに翻弄されながらも、明るく、おおらかに、前向きに生きる。その様が打ちひしがれている夫を尻目に実に痛快なのである

▼最近、店頭に『借りた金は返すな』などの本も出ているが、主人公・アキ子は元より夫も必死に返済のため東奔西走する。周囲の男どもは、実に情けないのだが、物書きのアキ子は決してめげない。「もうこうなったら、矢でも鉄砲でも持ってこい、ってのよ!」。しかし、やむなく縁なし眼鏡をかけた小太りの金貸しから借金

▼金貸しは哀れみを持って忠告する。「絶対にわたし以外の所から借りちゃいけません」と。その言葉に初めて涙し、借金が増えた苦痛を忘れる。小説の最後では車の流れに向かって「バカヤロー」と叫ぶ。ピアス著『悪魔の辞典』によると「借金」とは奴隷を監督する者が用いる鎖と鞭の代わりをなす。また、巧妙に工夫された代用品とある。

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら