コラム

2003/04/05

孤立無援と言うこと(松・JI)

2003.04.05 【孤立無援と言うこと】

▼警察庁の調べによると年間自殺者数は約3万人に上る。健康に難を抱える場合や経済に苦しむ場合が大半を占めるが、50歳代と60歳以上だけで全体の半数を超え、また7割が男性である

▼広島で先日、民間から小学校校長に登用された50代の男性が自殺した。学校改革に乗り出すも教職員からは無視される。教育委員会に訴えるも、頑張れと返される。その結果、死を選んだ。広島では数年前にも高校の校長が、卒業式国旗掲揚推進派の教育委員会と、反対派の教職員に挟まれ死を選んだ

▼ある無名のジャズミュージシャンは難病にかかり演奏が不可能になり、その後多額の借金を残しホテルで首を吊った。残された妻子は路頭に迷い、自己破産の手続きを執っている。生きがいと収入の両方を失ったことが彼に未来を見る力を失わせたのだろうか。彼は家族に「死にたい」と洩らすことはなかった

▼インターネットの自殺サイトで出会った若者が心中するという事件も続いた。面識のない者同士が自殺願望という共通意識のみで集まり、この世に別れを告げる。個々には「死にたい」と思うほどの苦しみや絶望があったのだろう。悩みはネット掲示板でしか語れなかったのかもしれない。最後に同胞を求めたというのは、死への恐怖を乗り超えるためだろうか

▼孤立無援という状況は、その人の視野を狭めると同時に、極度に人を弱くさせてしまう。ようやく到来した春は出会いと別れの季節。旧知の仲にも変化が起こり、また新しい人との交流も始まる。昨今「暖かい和」が結構そこ、ここにあるものだ。疎外感の多い社会だが、捨てた物でもない。(松・JI)

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