コラム

2003/04/25

遥かなる昭和の想い(水・KK)

2003.04.25 【遥かなる昭和の想い】

▼平成15年も3分の1が過ぎた。かつて「明治は遠くなりにけり」と言われたが、いっこうに出口の見えない長期不況のせいもあってか「昭和」が遥か彼方に感じる

▼先日、東京都大田区にある「昭和のくらし博物館」を訪れた。京都女子大学・小泉和子教授が昭和26年建築の実家を、戦後の庶民生活の資料として残したいと考え一般開放している。中でも台所脇の茶の間には丸いちゃぶ台、火鉢、お櫃(ひつ)が並び郷愁を誘う

▼日本にダーウィンの進化論を紹介し、大森貝塚の発見でも知られるアメリカの動物学者エドワード・モース博士は研究の傍ら、当時の日本の食料品や菓子のブリキ缶、ガラス瓶、街の看板などを蒐集して本国に持ち帰った。100年以上の時を経た現在、モースの膨大な日用雑貨コレクションはボストンのセイラム・ピーボディー・アカデミーに文明開化の日本を知る文化財として所蔵されている

▼明治期の文明開化に続いて敗戦後、日本は2度目の異文化の受容期を迎えた。特に昭和30年代、とりわけ37年頃からの高度経済成長の時期は伝統的な和風生活から今日に至る洋風で近代的な生活への過渡期であった。戦争による物資の欠乏状態から開放されたところに家庭用電化製品が次々に出現。人々はそれらを買い揃えるのを目標にひたすら働いた

▼最近、新聞や雑誌などで、昭和の暮らしを見直そうーといった企画、特集をよく目にする。確かにレトロ趣味もあるだろう。若い人にとってはもはや異文化になってしまっていて珍しく感じられるのかもしれない。しかし「昭和」にははっきりとした生活の目標と手ごたえがあったような気がするが。(水・KK)

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