コラム

2003/05/01

電線類の地中化問題(本・SY)

2003.05.01 【電線類の地中化問題】

▼日本は欧米に比べて電線類の地中化率が低い。都市、郊外を問わず、電柱は日本のいたるところにある。何年か前から、電柱のある景色は景観を壊すという声が高く電線類の地中化の推進が決定された。東京の目抜き通りなどではさすがに電柱は消滅した

▼電柱が1本また1本と街から姿を消すことが「景観配慮型のまちづくり」ということで、官公庁の予算にもこの「電線類の地中化」がしっかり組み込まれている。もう既定の事実となったのか、この問題を改めて論じる人は少なくなった

▼でも、日本全土から電柱を取り払ってしまってよいのだろうか。現在の日本の道路は江戸時代の道路網のかなりの部分を引き継いでおり狭い。歩行者空間であったものをコンクリート舗装して車道に作り変えた。歩道のある道路は少なく自動車の大名行列となっているのが現実である

▼「歩道もねぇ、ガードレールもねぇ、白線すらねぇ、おらこんな道路いやだー」と叫んでも、十年一日、日本の道路政策はほとんど進歩しない。そして、交通事故死者は毎年1万人に迫る勢いである。さらに、絶望的なのは「道路などの公共事業は無駄だ」と叫ぶ一部政治家、世論である

▼日本の道路は改善すべき点が山ほどある。その中でも、絶対的な交通弱者である歩行者のための安全対策がまったく不十分である。だが、現実問題、公共事業予算削減の中、先進的な道路整備は夢のような話になっている。しかし電柱も矛盾するようだが貴重な効用もある。歩道のない狭い道路で頑丈な電柱があるとほっとする。それは万が一、車が突進してきた場合の緊急避難場所になるからだ。(本・SY)

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