コラム

2003/05/07

特需に頼らず経常で(本・SY)

2003.05.07 【特需に頼らず経常で】

▼ある業界団体の取材で「新技術開発とその需要見通し」について聞いた。ここ数年、どの団体を取材しても受注統計を示す棒グラフや折れ線グラフは右下がりの一途。コメントも「ここ10年で最低の数字」「受注環境は厳しさを増している」といった暗いものが圧倒的。何か見通しを明るくする材料はないかとない知恵をしぼり「技術」という2文字が浮かんだ

▼そこで勇んで質問したところ、たまたま会見に出席されていた会長さんが「特需に頼らず経常ベースで取り組んでいく」と短い言葉で回答された。取材が終わった後も会長さんの言葉が頭の中でぐるぐる回った。長年にわたる経営の苦労がにじみ出た口調だったが、意味がつかめなかった

▼「経済を推進する原動力は企業者革新である」というシュムペーターの有名な言葉。これも技術革新が背景にあってのことだろう。この考えと会長さんの考えはまったく正反対のように見える。少し日を置いた。すると、「押しても駄目なら引いてみな」で、少し見えてきた

▼会長さんの言葉のキーワードは「頼らず」にあるのではないか。技術開発はもちろん重要なことだし、開発の成果によって新たな需要が創出されることもあるだろう。しかし、技術開発とはそんなに生易しいものではない

▼度重なる失敗の中からようやく小さな技術の芽が生まれると言っても過言ではない。その意味で「新技術」などと気軽に口走れるものではなく、まして「頼れる」ものではない。日常の業務の中で持てる能力を出し切ること。その延長線に新技術も見えてくる。会長さんの「特需に頼らず」はそんな意味合いにとれた。(本・SY)

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