コラム

2003/05/16

読み手惑わす外来語の乱用(本・MM)

2003.05.16 【読み手惑わす外来語の乱用】

▼国立国語研究所が、国民に定着してない外来語62語の日本語への言い換え例をまとめた。以前から腑に落ちなかった外来語乱用に歯止めがかかることを期待したい。業界団体は「できる限り外来語を排除して」と行政に幾度となく要望してきたが梨の礫だった

▼トレーサビリティー(履歴管理)、アジェンダ(検討課題)、インキュベーション(起業支援)などが正しい日本語に言い換えられ、官公庁や自治体に周知されることになった。「外国への劣等感」や「分かる人に分かればよいご都合主義」「読み手に理解してもらう態度の欠落」が外来語乱用を生んでいるようだ

▼確かに日本人は律令国家の昔から加工技術に長けていた。言葉も例外ではない。中国から漢字(真名)を輸入するや平仮名、片仮名を創り、国字を造語して、すばらしい日本語を育んできた。「2カ月連続auを抜くJ-フォン」の見出しには漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字、アラビア数字がそのまま収まる。日本語だけにできる神業である。書道は日本語を芸術に仕立てた

▼日本語は増殖能力も群を抜く。例えば雨。春雨、五月雨、梅雨、時雨など。さらに、御降り、秋霖、卯の花腐し、風の実、縦洪水、天泣、狐の嫁入り、山廻りと雨の異名まで作り出す。増量の秘訣は目的や用途に応じた言葉を正確に記す国民性にある

▼春夏秋冬の季節が日本人の性質を形成してきたとも言える。定着できない曖昧な外来語からは到底増殖は見込めない。時事につけ込んで、そんなカタカナ語の言い換えを試験などに出そうという企業があったなら嘆かわしい限りだ。日本語の魅力こそ出題すべきである。(本・MM)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら