コラム

2003/05/23

黒星を糧にして(水・KK)

2003.05.23 【黒星を糧にして】

▼「100引き分けより、1勝99敗のほうが価値がある」−近所の子供たちに剣道を教えるKさん(45歳)の口癖だ。剣道を習い始めの子供は打たれることを嫌がり守り一辺倒で引き分けが大半だ。「負けを恐れては強くなれない」−Kさんの檄が道場に響く

▼戦績が必ずしもそのまま実力をあらわすものではないが、チャンピオン経験者が通算で負け越している例はそうはないだろう。プロボクサーで元東洋、日本フライ級王者五十嵐力さんの生涯戦績は46戦して17勝18敗11分。遅咲きの彼はデビューから3年間で4回戦を18試合も戦ったが長い下積みの中で力をつけ、敗れはしたものの世界戦の檜舞台も踏んだ

▼元世界ジュニアウェルター級王者ソウル・マンビーがタイトルにたどり着いたのは80年2月、32歳の時。すでに11の黒星を喫していた。地味で平凡なボクサーと見られていた彼に転機が訪れたのはロベルト・デュラン、アントニオ・セルバンテスらとグローブを交えてからだ。勝てなかったが歴史的強豪との連戦でたくましさを増した

▼5度の防衛の後、王座に別れを告げたマンビーのラストファイトは2000年5月。なんと52歳の時だ。84戦45勝19KO33敗6分。KO負けが1つしかないのが彼のレベルの高さを証明している

▼輝かしいアマチュアのキャリアを土産に鳴り物入りでプロ入りし、白星の山を築きスター街道をひた走る。いつの世もファンはそんなヒーローの出現を待ち、喝采を送る。しかし戦績がすべてと見られるプロの世界で、黒星を糧とし不断の努力で大輪の花を咲かせた彼ら。我々に勇気を与えてくれる偉大なる拳豪に違いない。(水・KK)

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