コラム

2003/06/05

スウィングバイ的思考法(本・SY)

2003.06.05 【スイングバイ的思考法】

▼惑星探査機ボイジャー1号、2号の活躍が新聞、テレビで大々的に報道された頃、にわか天文ファンになり、入門書などをいくつか読んでみた時期がある。その中でひとつ強く印象に残ったことがある。「スイングバイ」という宇宙航法技術で、「重力加速」と訳される。探査機を惑星の重力圏に突入させ、重力を利用して方向を変えると同時にスピードアップを図る技術である

▼ボイジャーも地球を出発した頃は木星に行ける程度のスピードしかなかったが、通過する惑星の重力を利用することで加速し、土星、天王星、海王星にも接近した。この画期的な宇宙航法技術によって世界中の人々が太陽系の果ての惑星の鮮明な画像を見る幸運を手にした

▼この「スイングバイ」という技術のアイデアを思いついたのは、ロケット工学者でもNASAの研究者でもなく、NASAにアルバイトに来ていた1大学生だったという。その大学生の発想のすごさにも驚くが、1アルバイト生の考えにも真剣に耳を傾けるアメリカ人の思考の柔軟性にも感動した

▼日本でもアメリカほど大規模ではないが、「スイングバイ」技術を利用した惑星探査計画を進めている研究機関がある。文部科学省の宇宙科学研究所である。先月9日には小惑星探査機の打ち上げに成功した。小惑星の物質を持ち帰り、宇宙誕生の謎に迫る計画である

▼太陽系の広大な宇宙空間から足下に目を転じて見る。そこは不況の嵐が吹きすさぶ日本経済という名のミニ宇宙空間だ。ここでアメリカの1大学生が思いついたという「スイングバイ」的発想で経済再生に向け「重力加速」できたらと願う今日この頃である。(本・SY)

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