コラム

2003/06/12

ノーベル受賞者の経済再生(甲・EO)

2003.06.12 【ノーベル受賞者の経済再生】

▼「痛みに耐えても状況は良くならない」これは、ノーベル賞経済学賞を受賞したスティグリッツ・米コロンビア大学教授が危機に陥った国にIMFが押しつけた政策を厳しく批判した言葉。某国の首相がオオムのように繰り返す、「改革無くして成長無し」とはまさしく対極だ

▼同教授は、1967年に弱冠26才の若さでエール大学教授に就任するなど経済学の秀才として知られ、1995年にはクリントン政権の大統領経済諮問委員長を務めるなど同国経済復活の立て役者としても知られる

▼我が国の経済についても、「景気の停滞期とデフレの時期に構造改革、特に金融機関の改革は非常に困難。不良債権を処理すれば倒産する企業が増えるために、さらに不良債権が増え、そしてまた貸し渋りが起こり、それによって経済はさらに悪化し需要が低下するという悪循環に陥っている」と分析する

▼その上で経済政策は、いかに経済を完全雇用に近づけ、総需要を刺激するかという問題から着手することが必要だ。この過程のなかで構造改革を進めるべきとし、インフレ率を2ないし3〜4%に引き上げることが日銀の責任であると提言。長らくインフレが続いたため、我が国を始め、経済学の思考もインフレを抑制する方向ばかりの懸念が続いているとしている

▼こうした中には、金利の上昇などの弊害もあるが、貨幣を大量発行することも提案。国債ではないので借金が増えず、景気対策などに自由に使える。一見、無茶にも思えるが、危機感の大きさを物語っている。これを「そのまま実行せよ」ということではない。抜本的効果のある経済対策を願ってのことだろう。(甲・EO)

厳選されたコンパクトな記事で
ちょっとリッチな情報収集

建設メールはこちら