コラム

2003/06/26

価値観の違い(長・EM)

2003.06.26 【「価値観」の違い】

▼タイ北部の町メー・ホーン・ソーン。ミャンマーとの国境に近いこの辺りに「首長族」と呼ばれる人々が住んでいる。首長族とは民族の名称ではなく、正確にはパドン族という少数民族の女性を指してこう呼ぶ

▼彼女達は5歳くらいになると真鍮でできたコイル状の輪を首に巻きつけ、徐々に長いものに取り替えていく。成人ともなるとまるで「ろくろくび」のような様であるが、ここでは首が長ければ長いほど美しいと評されるのである。この首輪が大そう重い。3〜4キロもある

▼彼女達は決して頚椎の数が増えていたり、伸びているわけではない。この重みによって肩が下がり、結果、首が長く見えるのだ。したがって首輪を外したからといって、ぐにゃりと首が折れることはなく、しばらく生活していると本来の長さに戻るという

▼我が国の経済を支える企業戦士達もまた、見えない拘束具でがんじがらめである。四方から降り注ぐ多種多様なストレスは、ぐいと心を締めつける。首は回らないし、肩も重い。多くを胸にしまい込んだまま決して歩みを止めようとしないその姿は、凛として誇らしくも見えるのだが

▼ある玩具大手メーカーが12才までの子どもを持つ保護者を対象に「子どもの宝モノは何」というアンケート調査を行ったところ「お父さん」との回答は全体の3・5%、悲しいかな第6位だったそうだ。言い分は「家に帰ってくるのが遅い」「新聞に夢中で遊んでくれない」などなど。子供達はお父さんの重い首輪を外そうと必死である。子どもには子どもなりの価値観があるのだ。丸い心のお父さんがすこぶる美しく見えるのである。(長・EM)

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