コラム

2003/07/10

経済のリバイバル(松・JI)

2003.07.10 【経済のリバイバル】

▼夕方の車中、ラジオから「いちご白書をもう一度」が流れてきた。歌っているのは20代前半の二人組「ビリケン」。現代風アレンジでラップが入る。しかし、ただでさえ物悲しいメロディーのその合間に、力のない暗い声で「元気出して」と囁くのである。夕闇迫る景色とも相まって余計に気が滅入ってしまった

▼過去のヒット曲のアレンジを変えたカバー曲が売れている。原曲の演奏部分に現代のリズムを合わせ、ラップで自分の言葉を表現する者も多い。このブームを見て、今や新たな名曲、後世に残る歌は生まれないのかと危惧する声も一部にある

▼「いちご白書をもう一度」は昭和50年、ばんばひろふみ達のバンド「バンバン」によってヒットした。歌詞には、学生集会にも参加した不精ヒゲ、長髪の若者が「〜就職が決まって髪を切って」恋人に対して「もう若くないさ」と言い訳したーとある

▼当時、日本はオイルショックから立ち直れず不況が深刻となっていた。完全失業者数は100万人、完全失業率は1・9%と現在の3分の1だが、有効求人倍率は0・6%で今とほぼ同値であり、仕事の数は少ない。当時も不景気から脱しきれず企業倒産が相次ぐいでいた。負債総額1000万円以上の倒産は年間1万件を超えている

▼「いちご白書をもう一度」のヒットから15年後、日本はバブルの絶頂期にいた。リバイバルで時代が回帰するならば、カバー曲が流れる現在から15年後の日本は「もう一度」好景気に沸くのだろうか。それとも新たな文化も産業も生まれず闇にさまよったままか。力のない暗い声で「元気出して」と囁くしかないのかもしれない。(松・JI)

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