コラム

2003/07/19

大河津可動堰の改築(新・KK)

2003.07.19 【大河津可動堰の改築】

▼日本一の大河・信濃川の河口付近に位置する大河津分水路可動堰(新潟県分水町地先)の改築事業が今年度から始まった。築70年が経過して老朽化が進んだためで、今後、最新技術を取り入れた新しい堰として生まれ変わる予定。筆者にとっても小学校の遠足等で何度も訪れた思い出深い施設だ

▼越後平野を洪水被害から守るために今から約100年前に始まった大河津分水路の工事は「東洋一の大工事」「東洋のパナマ運河」と呼ばれる大土木事業であった。山間部を約1・8?に渡って切りさく工事には、延べ1000万人の人々が従事し、総土量は実に約2、880万立方と途方もない数字である

▼当時、日本の土木技術は欧米から最新技術を導入するなど飛躍的に近代化が進んだが、作業の大半は人力に頼る部分が大きく、これが工事従事者数延べ1000万人に繋がった。分水路の通水以降、老朽化した施設の補修・改築が進み、今なお現役で活躍しているのは可動堰だけとなった

▼現在の可動堰を設計したのは、当時の内務省土木局に在籍しコンクリート工学の第一人者であった宮本武之輔氏で、現場責任者も務めた。この可動堰には我が国初の遠隔操作による電動モータ付鋼製門扉昇降方式が取り入れられており、現在まで基本的な仕組みは変わっていない

▼可動堰改築事業の初年度にあたる今年度は、概略設計に着手する方針で、新しい堰が完成するのは約10年後。苦難を伴った可動堰の建設に命を懸けた宮本氏は『民を信じ、民を愛す』を信条とした。彼の信条を受け継ぎ、およそ1世紀を経て生まれ変わる新しい堰がどの様な姿になるのか楽しみだ。(新・KK)

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