コラム

2003/09/09

迷走する入札改革(水・YH)

2003.09.09 【迷走する入札改革】

▼「唄を忘れたカナリヤは後ろの山に棄てましょかいえいえそれはなりませぬ唄を忘れたカナリヤは柳の鞭でぶちましょか いえいえそれはかわいそう」大正7年、仕事に行き詰まった傷心の西条八十が自分をなぞらえた詞である

▼成田為三の作曲で馴染みだが、軟弱・非教育的として学校で歌うことが禁止された時期があった。八方破れで四面楚歌の内容、全てを紹介するには余りにも今日の社会とりわけ建設業界に重なる。大人の哀愁を帯びたこの童謡にいたく感動した

▼オンブズマンの入札調書(本紙4日付既報)は西條八十の心境に追い打ちをかける。入札制度改革の推進、談合防止、公共事業費の大幅削減可能な状況を作り出す等の目的で2002年度工事について調査・分析。予定価格と比較し、落札額が高ければ「談合疑惑度」が高いとして47都道府県、県庁所在地市等をランク付けしたものだ

▼疑惑度が高い順に島根県、鹿児島県、栃木県、埼玉県。低い順に宮城県、愛媛県、香川県、神奈川県。この調査で全国の公共事業費概ね2391億円の節約が可能だとしている。基本的には低落札の推進である。予定価格の問題も言及する方針だが、低価格の弊害も並行して考えなければ片手間な調査となる

▼建設業者は概ね57万業者630万人を抱える基幹産業だ。予定価格に添った適正な利潤を得ることは企業として当然な権利。しかし現実は歩切りが横行し、予定価格は下がり続けている。これに添って安かろうという状態が推移したら常識として企業は成り立たないだろう。もしその術を具体的に示せたら説得力のある調査なのだが。不可能だろう。(水・YH)

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