コラム

2003/09/18

未来の国宝はどこに(松・JI)

2003.09.18【未来の国宝はどこに】

▼京都の三十三間堂が所蔵する国宝「風神像・雷神像」のうち、風神像が損傷した。展示のため東京国立博物館へ搬送し、開包すると左腕の肘から先がもげ落ちていたらしい。梱包の際は博物館担当者が立ち会っていながらの事故。風神像は修復のため、すぐ京都に帰った

▼「風神像・雷神像」は鎌倉時代の木造彫刻。慶派・運慶の長子、湛慶ら仏師による作品である。三十三間堂にずらりと並ぶ千体の観音菩薩の両端で睨みを効かせている。体長わずか1mの像だが、迫力のある顔が印象的だ。一般的には俵屋宗達筆の「風神雷神図」の方が有名だろうか。金の背景の中に愛嬌のある神が描かれている。こちらもやはり国宝だ

▼8月現在で国宝に指定されている美術工芸品は853種。有名なところでは奈良や鎌倉の大仏、雪舟筆「秋冬山水図」、教科書にも載る源頼朝の肖像画など。重要文化財の中でも学術的・芸術的・歴史的に価値のあるものだけが国宝となる。損傷した者は文化財保護法により罰が与えられる

▼建造物では211棟が国宝となっている。関東甲信越では日光の東照宮、長野の善光寺、松本の松本城、鎌倉の円覚寺、勝沼の大善寺など。前述の三十三間堂も、もちろん国宝に指定されている。211棟のどれもが歴史的価値の高いものばかりである

▼現代に建設された施設にも、やがては国宝となるものがあるだろう。我々の知る施設のどれが後世に残り、どれが国宝となるのか。あるいは今後建てられる建造物のうち、どれが選ばれるのか。もちろんそれを知ることはできないが、現代と未来とのつながりを想像するのもロマンがあって良いのでは。(松・JI)

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