コラム

2003/10/15

酒は福水か狂薬か(本・MM)

2003.10.15 【酒は福水か狂薬か】

▼酒の異名に「福水」がある。酒呑みが幸福の水と持ちあげての名であろう。「美禄」というのもある。高額の給与を意味するが、幸せとの命名らしい。智恵の湧く水「智水」や救いをもたらす「大乗水」の名も見える。僧の間では酒の隠語を「般若湯」と呼んでいる

▼道路交通標語に「飲んだら乗るな、乗るなら飲むな」がある。酒酔い運転による罰則が懲役3年以下または罰金50万円以下に強化された。検問での罰金より運転代行業者への支払いのほうがぐっと安い。人命を預かるバス運転者の、千鳥足ならぬチドリバスの蛇行飲酒運転が相次いで発覚している。その運転手は酒につかった酔っ払いだった

▼こういう呑み助は、よほどやる口なのであろう。焼酎で四六時中やりながら、ちょくちょく違反していたことは察しが付く。飲残しの酒を持ち込んで昼夜ハンドルを握られては、命がいくつあっても足りぬ。本人はほろ酔い、よろめいてまどろんでいればよいが、何とも呑気なものだ。「酒が好きでたまらなかった」と肝胆を傾ける前に、標語を呑み込んで欲しかった

▼骨の髄まで酒を入み込んでも、安全は身に沁みないらしい。酩酊運転者が第3者を死亡させた場合には重い「危険運転死傷罪」が適用される。酔い痴れの「痴」とは智恵が足りないことをいう。折角の「智水」も飲み過ぎると愚痴に痴漢に痴呆にと走って、智恵不足になるとは皮肉な百薬の長である

▼飲酒運転は厳に追放させなければならない。取り返しがつかなかったら、時に命をもって償わなければならぬ場合もあろう。そういえば、酒には「狂薬」「狂人水」という異名もあった。自戒を込めて。(本・MM)

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